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                               東北経済産業局
平成14年7月26日

東北地域における都市間連携による
広域観光圏整備計画調査(経済産業省)報告書 概要版

(報告書概要版のダウンロードはこちら→ 「WORD」・「PDFファイル」)

 本経済産業省調査では、過去の産業遺産や工場見学・伝統産業体験などを中心とする産業観光に着目し、この振興を中心とした整備計画を策定した。

1.産業観光の意義

(1)産業観光とは
 最近になって、各地で次第に「産業観光」が注目されるようになっているが、産業観光の考え方自体は目新しいものではなく、既に東京オリンピックの頃に産業観光という視点のもとに海外客を国内の主要工場に案内したことがあるという。この場合の産業観光は工場見学、技術見学というような捉え方である。
 本調査では、産業観光の概念を小さく限定せずに、“産業に関する施設や技術等の資源を用いて地域内外の人々との交流を図るもの”として捉えるものとする。

@過去の産業から現在、未来の産業までを対象とする
 このなかには、過去の産業(産業遺跡)、現在の産業 (工場見学、各種体験等)、未来の産業(科学技術の体験等)を含むものとして考える。
 なお、産業観光に類する概念としては「ヘリテージツーリズム(産業遺跡観光)」、「テクニカルビジット(技術者等が視察として工場見学をする)」、「体験観光、教育観光(青少年等のものづくり体験など)」などがある。

A産業観光の対象となる業種は1次産業からサービス産業まで幅広く捉える
 産業観光の対象となる産業の業種的な広がりとしては、1次産業から、鉱工業、エネルギー産業、運輸・通信関連産業、産業インフラ(橋梁、港湾等)など幅広く捉えるものとする。

B産業観光の仕方としては「みる」「学ぶ」「体験する」など幅広く捉える
 本調査で扱う産業観光は、「みる」「学ぶ」「体験する」など幅広く捉えるものとする。

(2)産業観光の波及効果
 産業観光は、一般の観光と比べると、観光による経済波及効果は小さいかもしれないが、より多様な分野に波及する効果をもたらすと考えられる。

@観光振興
 産業観光資源を活用し、全体的な観光の魅力向上や観光のテーマ(目的)の明確化を図り、地域の観光の振興を図ることが考えられる。温泉や自然・歴史資源等の既存の観光資源に加え、産業遺跡や工場見学等の産業観光資源の掘り起こしと活用により、観光入込客数の増加や観光収入の増大を目指す。観光のニーズの個別化が進むという現在の大きな動向にも沿っていると考えられる。

Aまちづくり
 産業観光による集客力の向上が、中心市街地ににぎわいを呼び戻すなど、地域のまちづくりに一定の効果を果たすと考えられる。具体的には、産業の歴史や風土を行かしたまちなみ整備等である。また、ハードの整備に加え、「○○のまち」で都市を売り出すといったソフトのまちづくりも考えられる。

B産業活性化
 産業観光が、生産者と消費者との交流となって、産業活性化の効果を果たすことが考えられる。消費者がリピーターとなって定着するほか、産業観光で一度来た後に産地直送等による継続的な販路確保などの方策も考えられる。また、産業観光を契機に異業種交流や産学官交流を展開し、イノベーションを進めることも考えられる。

C文化振興
 産業観光により、伝統的な産業技術等が地域文化として定着することが考えられる。近代化遺産としての産業観光資源の掘り起こし自体に文化的な意義があるほか、地域の地場産業等の技能・文化等の保存や継承等の意義がある。

D人づくり
 産業観光により、当該産業への関心が高まり、担い手の人づくりが進むとも考えられる。直接的な後継者の確保のほか、工場見学、手作り体験等の学習を通じ、子供たちや一般の大人がものづくりマインドを育んでいくことも考えられる。また、産業観光で重要な語り部を確保することが、企業におけるOBの雇用やNPO活動の充実を果たすことも考えられる。

これら5つの関係は、次図のように整理される。

  図 産業観光振興の波及効果のイメージ

図

2.モデル地区の設定と地区内の産業観光資源にもとづくテーマ性の整理

(1)モデル地区の設定
 産業観光は単に風光明媚な風景を見るのではなく、その産業が生まれてきた背景、いまを生きる人々への関心、つくられた商品への関心を喚起していくものである。従って、一定のストーリー性を持っていることが必要になる。
 そのためには、相互のアクセスにあまり時間を要しないような一定のエリア(県内ブロック程度)の中で、産業の背景、商品、作り手などを見聞きし、体験できるような流れができていることが望ましい。
 また、産業観光資源は、単独では強い集客力を発揮しにくいので、単発では魅力は弱い。そこで、有名な観光スポットのようにそれだけで集客力を発揮するのではなく、一定のエリアのなかで複数のスポットをセットで回ることができ、それにより産業のストーリー性を感じられるようにしていく。
 こうした考え方に立って、本調査では既に産業観光資源がある程度認知されており、なおかつ今後の産業観光振興の可能性が大きいと思われたエリアの中から、各県1つずつモデル地区を設定し、設定したモデル地区において産業観光の考え方、産業振興へのつなげ方等を検討した。

図 産業観光を検討するモデル地区

図

(2)モデル地区ごとのテーマ性の概要

@仙台地区(宮城県)を中心とする産業観光のテーマ例

  • 東北開発の歴史の中心であり、技術・研究開発の拠点である仙台
     東北の開発は、明治以降、国策として整備が行われ、最も代表的な事業が野蒜築港である。また、三居沢の水力発電所は、我が国最初の水力発電所ながら現在も稼働中である。
  •  東北大学の附属研究所である、金属材料研究所や電気通信研究所などの附属研究所は、東洋刃物、東北特殊鋼、東北金属(現トーキン)などの企業を生み出してきた。
     さらに、原子力発電(女川町)やロケット技術(角田市)や鉱山技術から転換したリサイクル技術(鶯沢町)など先端の技術もある。

  • 豊かな農林水産業とそこから派生した食品加工業
  •  宮城県は、ササニシキに代表される米どころである。また、金華山沖の豊かな漁場をひかえた南三陸の漁港を有しており、豊かな農林水産業地帯といえる。そして、農林水産物(食材)を活かし、日本酒、笹かまぼこなどの食品加工業が発展しており、積極的に工場見学や体験等を実施している企業が少なくない。

  • 多様な伝統産業
  •  作並や鳴子のこけし、雄勝の硯、仙台箪笥、松川だるまをはじめ、地域の資源を活かした多様な伝統産業が各地に発展してきた。仙台市郊外の秋保工芸の里等では、これらの伝統産業を見学・体験することができる。

  • 多様な鉱産資源
  •  古くは日本で初めて金を産出し、奈良の大仏にも使われたとされる涌谷町の金山や1100年以上の歴史を持つ細倉鉱山等があった。細倉鉱山は、昭和62年に閉山されたが、その製錬技術は、家電リサイクルにいかされるようになり、東日本リサイクルシステムズは、この環境技術を学ぶ多くの見学者を受け入れている。

図

A米沢地区(山形県)を中心とする産業観光のテーマ例

  • 上杉米沢藩の伝統を受け継ぐ伝統と歴史的工芸等の産業資源
  •  米沢市内は、笹野一刀彫の実演(笹野民芸館)や米沢織の歴史と体験(米沢織物歴史資料館)などの拠点と、米沢織の工房や紅花染め等が体験できる場所が点在している。また、養蚕や漆器・鋳物・陶器等の地場産業、深山和紙、長井紬などの歴史的工芸品の体験・見学ができる。

  • 我が国を代表する多様で豊かな農業資源
  •  リンゴ、サクランボ、ブドウ、ラ・フランス、桃、スイカ、イチゴなどの収穫体験と産地直売、そば打ち等の体験観光メニューがある。

  • 山形大学と我が国を代表する最先端企業による工場群資源など
  •  有機EL等の先端技術を見学する機会や、雪室や雪冷房システムなどの取り組み(飯豊町)。

図

B会津地区(福島県)を中心とする産業観光のテーマ例

  • 恵まれたとはいえない条件にある農業と殖産興業の歴史
  •  明治政府の士族授産などの政策を受けて、は安積疎水の開拓や養蚕業などが発達した。

  • 首都圏へのエネルギー供給基地
  •  戦前の猪苗代の水力発電、戦後の日本版TVAといわれた只見川地域電源開発、我が国最初の商用原子力発電所である福島第一原子力発電所、我が国最大の地熱発電所である柳津西山地熱発電所等とエネルギー源の整備が進んだ。

  • 交通の発展が変えていった伝統産業
  •  岩越鉄道の開通(後の磐越西線)により、漆器、酒造、陶磁器等が全国へ出荷された。

  • 多様な鉱産資源
  •  高玉金山、半田鉱山など日本有数の鉱山跡。常磐炭坑(1970年閉山)は温泉を活かした観光開発をてがけている。

  • 新たな産業群など
  •  高速交通網の整備に伴い、エレクトロニクスをはじめとする工場の立地が進んだ。東北で最も工業化が進む。

図

C新潟県央地区(新潟県)を中心とする産業観光のテーマ例

  • 洋食器、金属ハウスウェアなどの地場産業とその展開
  •  燕市は大正期から金属洋食器産業が発展、三条市は「鍛冶のまち」と称し、刃物)、作業工具、木工業などが発展している。周辺の地場産業としては、五泉市のニット、加茂市の箪笥、与板町の鋸、見附市のニット、栃尾市の合繊、小千谷市の小千谷縮み、十日町市のきもの、小国町の小国和紙などがある。

  • 石油等のエネルギー開発の歴史
  •  新津では、明治初期から石油採掘が行われ、重機械工業や石油暖房器具のメーカー等が生まれていった。また、水力、火力、原子力など多様な発電所の立地も見られる。

図

3.地域として魅力的な産業観光メニューを提供するための考え方

(1)課題把握の方法
 
本調査では、産業観光のニーズ側(訪問客)、シーズ側 (受け入れ側)の双方に取材等を行い、様々な課題を抽出した。

ニーズ側調査

シーズ側調査

  • 全国修学旅行研究協会、旅行ガイド出版社、小中学校等へのヒアリング
  • 技術者OBや旅行関係者等産業観光に関心の高い人のグループインタビュー
  • 当該地域及び東京都区内の学校へのアンケート
  • 域内の主要な産業観光施設へのヒアリング
  • 域内の全市町村、商工会議所、商工会へのアンケート
  • 域外の著名な産業観光施設へのヒアリング

 本調査は、今後の施策提案(行政がなすべきこと)を目的としているが、産業観光は何よりも住民や企業等が盛り上げていくべきものである。
 そこで、住民や企業が取り組むべき事項を含めて、地域として魅力的な産業観光メニューを提供するための条件について検討し、整理を行った。

(2)課題内容と方向性

本資料では、
 ○どのような人がどのような目的で産業観光するのか(訪問客のタイプ別)
 ○個々の産業観光スポットをどうしたら魅力的にできるのか
という2つの視点で検討を行った。
その詳細は、下図に示したが、マトリクス表の左側の項目が訪問客側の視点である。表の上部が個々の産業観光スポットの視点である。

図

4.産業観光を魅力的にする条件

(1)産業観光コースを魅力的にするための条件(産業観光客のタイプ別。地域がトータルに展開すべき方策)

@ビジネス客による工場見学等
 ビジネス客を工場視察などの形で受け入れるスタイルについては、かつて大手旅行会社が「テクニカルビジット」として外国人客を受け入れていた実績がある。日本企業も昭和20〜30年代には米国の工場視察を盛んに行っていた。
 現在ではこうしたスタイルは一般的ではないが、企業グループの研究会などで工場見学をするケースが少なからずある。また、デザイナー等が新商品開発に当たり、これまで使用したことのない材料を試してみようと思って訪問することもある。

表 ビジネス客の工場見学等を魅力的にするための条件

 

場面(シーン)

○出張(商談)のついで、見本市の見学のついでに工場見学できる先をホームページ等で検索し、自分でアポをとる。

○メインの商談が終わった後、工場を訪問し、生産内容に関する社長の説明を受け、製品・加工品を見せてもらう。名刺交換する。
○気になった製品等があれば質問する。「この材料でこんなものはできませんか?」といった話をする。直売施設があるところ(陶器等)では、製品を購入するなど。

○相手の連絡先は知っているので、必要があれば連絡する。

メリットと課題

訪 問 者

受け入れ側(企業)

地元(観光振興)の役割

○ビジネスのヒントをつかめること。
○勉強になること(環境対応への関心など)。

*広い視野で自社のビジネスを考えること。
○その会社に興味を持った人からビジネスのヒントをつかめる場合がある。

*意見をうまく引き出す。
*来てほしい人へのPR。
○地元の企業を宣伝できる。中には、商談につながる可能性もある。

企業情報の提供体制
*不適切な訪問客の選別

条 件

○どんな企業があるかという情報の提供(訪問客にとっての利便性)
・「当地域にはこんな企業がある」という情報が簡単に入手できる必要がある。既存のホームページ等で検索するのはかなり骨が折れるので、訪問にまではなかなか至らない。
   →ユニーク企業を商工会議所のHPで紹介するなど
●来て欲しくない訪問客の選別(受け入れ側にとっての安心感の確保)
・同業者には見せたくない、遊び半分の客には対応したくないといった事情があるので、1対1で交渉するか、信頼できる仲介機関が必要。
○大規模な受け入れをする場合には、保険加入が望ましい。

展開例

○テーマ性を持った企業情報パンフレットの制作
    例:南東北のエコ産業、南東北のクラフト産業
○見学対応のできる工場のリストアップ
○産業観光フォーラムの開催(受け入れの気運づくりのため)

A教育旅行

 総合学習の導入などにより、小中学校等の体験学習・教育旅行のニーズは増えつつある。ただし、修学旅行等の体験学習の要素は多様であり、産業に関連したものはその一部に過ぎないことに留意が必要である。

B子どもに体験させたい家族

 学校で行う教育旅行・体験学習とは別に、家族単位で子どもに体験させたいと思う親は多い。限られた時間のなかでいろいろな体験をさせたいと思っている。

C域内住民が近くを回る

 今後、地元に対する住民の関心は高まってくると考えられる。一つには、現役を引退したリタイア層が増えているからである。これらの人々の中には好奇心旺盛な人もおり、地域の風物、歴史に興味を持つ人も多い。
 例えば、東京ではシニア層による「まち歩き」が盛んになっており、最近数年間で「まち歩き」の雑誌が多数出版されている。また、サラリーマン層が増え、地場産業との接点が薄れている中で地元産業を知りたいという関心はむしろ高まっていると考えられる。

表 教育旅行を魅力的にするための条件

場面(シーン)

【前々年度、前年度まで】
○学校の先生との交流(コーディネータが紹介)
○学校では、教育旅行のテーマを検討(コーディネータによる調整)
【当年度】
○児童・生徒による事前学習(HPや手紙等を活用した事前学習)

○現地訪問(小グループによる人的交流)

○事後学習(感想文の交換、訪問先のその後を伝えるHPの充実、児童・生徒が見学した際に作られていた製品がどこに売られたかを連絡等)

メリットと課題

訪問者(児童・生徒、教師)

受け入れ側

地元の役割

○教育的な価値の高い様々な体験ができる。
○地域の人々と交流ができる(地域での暮らし方とその背景にある生活環境を学習できる)。

*情報収集と事前学習が大切
○自分の仕事を子供に紹介できる(職業紹介)。
○新しい事業としての展開可能性をさぐる。

*児童・生徒にわかりやすく、かつ興味を持つように指導する技術が必要。
*児童・生徒に「語る」経験を通じて、消費者へPR法を学ぶこと。
○宿泊や、周辺観光地訪問などでの需要拡大が期待できる。
○良い印象を与えることができれば、今後数十年にわたってのリピーター確保につながる。

条 件

○当地域でどんなメニューが提供できるか情報の提供(訪問客にとっての利便性)。
○学校との交流(コーディネータの充実)。
○地元の人々の指導方法の充実(児童生徒向けの指導方法の研修)。
○小グループでの活動ができる多彩なメニューの充実。
○事前、事後の学習に利用可能な情報提供機能(HP等)の充実。
○教育旅行として広域的にめぐることのできるストーリーづくり。

展開例

○教育旅行に関する総合的な情報発信機能の整備。
○コーディネータや、現地指導者等の充実と児童生徒向け指導法の研修。
○教育旅行向けのストーリーガイドの整備、充実。

表 子どもの体験学習を魅力的にするための条件

場面(シーン)

【域内住民】
○週末に子どもを連れてマイカーで産業観光スポットに行く。
○そこで、各種の体験をする。インストラクターの先生について、工芸体験などをする。子も親も体験する。
○3〜4時間程度を過ごし、お土産を買って帰宅。
【遠方客】
○夏休みの数日を過ごすために、現地に行く。数日間に渡り、釣り、山歩き、工芸体験、農業体験などいろいろな体験をする。
○工芸体験では、地場産業の工房に行き、インストラクターの指導を受ける。
○自分の作品を持ち帰る。

メリットと課題

訪 問 者

受け入れ側

地元の役割

○子どもにいろいろな体験をさせられる。

*事前、事後の学習により体験の質をより高めることができる。
○家族旅行による観光収入が期待できる。何度も訪れる可能性もある。
○口コミによる評判の広がりがありうる。

定期的なコミュニケーションを続けていくこと。
○体験メニューの品揃えを増やす。

○メニューの発掘、コーディネート。
*広報体制の充実。

条件

○遠方客を受け入れるには、体験メニューが多いこと。
○家族連れ向けの安い宿泊施設があること。

展開例

○体験合宿ツアーの企画
○体験学習メニューの情報提供
○「工芸村」づくり(地域内の複数の体験工房ネットワーク化)
*他は教育旅行の施策と同じ。

表 域内住民による産業観光を魅力的にするための条件

(シーン)場面

○勤労者は休日に訪問。マイカーで行き、1時間程度を過ごし帰ってくるパターン。
○リタイア層は平日に訪問。

メリットと課題

訪問者

受け入れ側(企業)

地元(観光振興)の役割

○地元のいろいろな風物を知ることが出来る。
○知人に紹介できる。

*産業観光資源の掘り起こしに参加すること。

○口コミを通じて訪問客の増加が期待できる。

*地元客を軽視せず、理解者として大事にすること。
○地域住民のアイデンティティの確認ができる。
○地域外に向けて、地域個性をアピールできる。

*産業観光資源の掘り起こし。

条件

○市民グループを立ち上げるリーダーシップが必要(民間ベースか、市役所、観光協会、商工会議所など)。

展開例

○産業観光資源研究市民グループの結成。
○地域の産業観光スポットガイドの制作。
○地域の産業観光のストーリーの紹介(ホームページ等)。

(2)個々の産業観光スポットを魅力的にするための条件(産業観光資源のタイプ別。各スポット毎に行うべき方策)

@産業遺跡
 古い機械がただ展示してあるだけでは全く魅力的ではない。技術者OBですら興味を引かない。しかし、その機械などのストーリーがわかると興味がわいてくるので、適切な説明を行えば観光資源となる。

表 産業遺跡の観光を魅力的にするための条件

場面(シーン)

○事前にホームページ等で産業遺跡の歴史的な経緯等を勉強する。

○到着後、現地にある展示館で展示物や説明パネル等を見ながら歴史を実感する。
○予約してあった産業観光ボランティアの人と一緒に現場を歩く。「ここが何々だった」「こうやって、これをつくった」という説明を受ける。昔の人々の様々な工夫の跡に驚くとともに、現場での実感する。

○帰宅後、いろいろな資料を調べてさらに知識を深める。一部の人は自ら制作したホームページに産業観光スポットを紹介。

メリットと課題

訪 問 者

受け入れ側

地元の役割

○産業遺跡を見学し、自らの知識と組み合わせ、歴史を理解できる。

*事前、事後の学習が必要。
*関係者やボランティアへのアポ取りを怠らず、話が聞ければ非常に面白い。
○地域固有の歴史、昔の人々の努力の跡を見てもらうことで地域アイデンティティを確認。

*地元としての受け皿づくり。
*昔の歴史を知る人の確保。協力依頼。
○既存観光地にプラスアルファの要素となり、集客力をアップ。

*既存観光地と組み合わせたアピール。
*産業観光ボランティア等の組織化。説明できる体制づくり。

条 件

○一般に産業遺跡は、見ただけでは興味がわかない。「この機械がどうやって動いたのか」「どこに工夫があるのか」「なぜこの地につくられたのか」「なぜ廃業したのか」など、産業遺跡にまつわるストーリーが見えてこないと興味がわかない。
○そうしたストーリーを訪問客に伝えていくことが絶対条件である。方法としては、ホームページでの紹介、語り部ボランティアの配置、展示館の開設などが考えられる。語り部がいて、語り部の活動の拠点となる展示館があるのが最も望ましい。
○実績のない地域では、地元でグループを結成し、歴史を掘り起こすところから始める必要がある。さらに、それらの人を中核にボランティアを結成していくこと。

展開例

○ボランティアガイドづくり(地域でのグループ結成、登録、派遣)
○産業遺跡のパンフレット作成、配布

A伝統産業体験
 陶器、木工、織物、食品などは、伝統的な産業であり、ものづくりを実感しやすいものである。既に、工芸体験などの形で観光化されており、追加的に講じる施策は少ない。今後は、体験をより本格化させていくとともに、地域の一流品をアピールしていく場が必要である。

表 伝統産業体験を魅力的にするための条件

場面(シーン)

【お手軽コース】
○素晴らしい作品のショールームを見学。
簡単なものづくり体験。
【セミプロ的な工芸】)
○関心を持った人には、長い時間をかけて研修を行う。

メリットと課題

訪 問 者

受け入れ側

地元の役割

○ものづくりの面白さを発見できる。
○創作意欲を満たす。
○職人の苦労、工夫が実体験としてわかる。

*事前、事後に勉強すること。
*生産者との長期的な関係をつくること。

○観光化することでの収入。
○消費者との直接的な交流。それによるヒント。

*消費者の嗜好を把握すること。
*顧客名簿として残し、長期間、関係を継続すること。

○観光客の増大。
○地域アピール効果
○体験工房のガイド作成。

昔の産業遺産、博物館と現在の産業など総合的に学べる環境を整備
*一番の商品をアピールできるショールームをつくること。

条件

○お手軽なものづくり体験だけでなく、セミプロを育成するような場が求められる。

展開例

○ものづくり合宿(1週間から数ヶ月程度の合宿を企画・募集する)
○地元の最新の製品をきれいにディスプレイするショールーム施設の整備。

B工場体験・工場見学
 一般の観光客が工場見学をすることは、「ビール園」やガラス工房などを除いて稀である。一方、機械金属系の工場などは、生産ラインを見ただけでは何をしているのかわからず、製品イメージも湧きにくい。受け入れ側も素人の観光客に対応するのは負担感が大きい。
 今後、観光化の可能性が大きいと思われるのは、デザインで感動できるような産業である。例えば、燕の洋食器メーカーで素晴らしいショールームを保有している企業があり、これを見学できれば洋食器工場のイメージは一変する。
 また、デザイナー等が陶器や織物などの産地を訪問することで新たなヒントが生まれる可能性がある。

表 工場体験・工場見学を魅力的にするための条件

場面(シーン)

○素晴らしいショールームの見学。ボランティアガイドの説明を聞きながら。(場合によっては社長が対応)
○その後、ガイドに説明を受けながら工場を見学。

○買い物(その工場内または地場産業センター等)

メリットと課題

訪 問 者

受け入れ側

地元の役割

○ものづくりの仕組みがわかり面白い。
○デザイン性のある製品では、ショールーム等で素晴らしい作品を見られる。
○できたての食品を食べる等。

*事前、事後の学習。

○企業としての宣伝。
○透明性の高い企業であることをアピールできる(不正がない)。
○異業種の人へのアピール。

*消費者モニター、直売先としての顧客名簿活用。
*異業種企業からビジネスヒントをつかむこと。
*保険への加入。
対応する人をボランティアとして確保する等。

○地元にある企業のPRができる。
○住民が地元企業を知る機会が出来る。

*地元企業の業務をわかりやすくHPで紹介。
*住民見学会の開催。
*見学対応のボランティアの派遣。

条件

○デザイン性に優れた商品が見られるなど、おもしろさが必要。
○そうでない場合には、十分に語れる人が必要。

展開例

○工場の公開の働きかけと、見学対応工場のリスト化。
○地元企業の業務などのHPでの紹介。
○住民による企業見学会の開催。
○見学対応できるボラティアスタッフの派遣。

5.産業観光振興のポイント:“語り部”、“語り”の重要性
 産業観光は地域の全員がその地域を売り出すものである。例えば、温泉に宿泊する客に地場の美味しい食材の料理を出すとき、その食材についての“蘊蓄”を語り、それらがつくられている場所を紹介する。するとその客は翌日にその場所を訪れて、実際の目で確かめるかもしれない…。こうした連鎖が重要である。
 そこで、産業観光のポイントは、以下に集約される。
  @地域の良さ(オリジナリティ)を再発見する
  Aそれをわかりやすく面白い言葉で語れる“語り部”をつくる
  Bマスメディアだけではなく“口コミ”などの手段も使ってその地域の“ファン”を着実に増やしていく
 この中で、特に重要となるのが、語り部である。この語り部の“語り”は、1.(2)であげた多様な面への波及に関わるものである。

図 産業観光における「語り」の効果

図

6.施策提案

(1)段階的な取り組みの必要性
 現在のところ、産業観光に対する地元の関心は強いとはいえない状況にあり、工場等においては産業観光のメリットを感じていない企業が多い。そのため、現状では産業観光スポットを増やそうとしても、施設公開などの協力を得られないケースが多いと思われる。こうした中で、南東北の産業観光を活発にするには、まず地域内部での気運づくりが重要となる。
 そこで、各地でのワークショップの開催などを通じて産業観光のメリットを訴え、地元行政、観光業界、その他企業の意欲を喚起し、取り組み体制をつくる(第1段階)。
 そうした体制を整えたうえで、外向きの情報発信に注力し(第2段階)、さらにソフト事業の実践とハード環境整備に向けた具体的な計画策定(第3段階)、ハード事業(第4段階)へと展開する。

@第1段階:産業観光の意義の地元へのアピール、意欲の喚起
 ・産業観光シンポジウム、ワークショップの開催等

A第2段階:地域での取り組み体制づくりと情報発信
 ・産業観光資源研究住民グループの結成、ゆるやかな横のネットワークづくり
 ・産業観光に関するHP制作などの各種情報提供
 ・ボランティアスタッフの確保・育成(緊急雇用対策事業等の活用も考えられる)

B第3段階:ソフト事業の実践とハード整備計画の策定
 ・各種ソフト事業の企画、実施
 ・TMOなどを巻き込んだソーシャル・コミュニケーションを形成し、バリュー・フォー・マネーの視点に立ったハード環境整備のための計画を策定

C第4段階:ハード環境整備等
 ・拠点施設の整備(集客の核、地域に散在する産業観光資源の「ハブ」の役割)
 ・PFI事業の展開も視野に入れる(例えば、官による施設整備 ??NPO法人による管理運営)

段階的取り組み

平成14年度

平成15年度

平成16年度

それ以降

@ 地元の意欲の喚起 wpeF.jpg (878 バイト)
A

地元の取り組み体制

wpeE.jpg (1116 バイト) wpeE.jpg (1116 バイト)

情報提供

wpeE.jpg (1116 バイト)
B

ソフト事業の実践

wpe10.jpg (1027 バイト) wpe10.jpg (1027 バイト)

ハード環境整備計画策定

wpe11.jpg (1027 バイト) wpe10.jpg (1027 バイト)
C ハード環境整備等       wpe12.jpg (1024 バイト)

注:上記アロー図は段階的取り組みの開始時期の目安を示したもの。Cハード環境整備等は計画策定後の予算措置、地元とへの調整などの不確定要素があるため点線表示とした。

(2)地域ごとの取り組みと広域での取り組み

@地域ごとに推進すべき施策
 ・地域の産業観光資源の掘り起こし、地域アイデンティティの確認
 ・産業観光コーディネート機能(協力依頼、語り部の確保、情報発信等)
 ・語り部の育成、まちなか・観光地等における情報発信

A広域連携の下で推進すべき施策
 ・産業観光の広域コーディネート機能
 ・広域的な情報交流、対外発信
 ・各地の組織・活動の支援

(3)施策の全体像
 今後、講じるべき施策の全体像は以下の表の通りである。DとEは特定の集客ターゲットに向けてのものであり、@からCまでは共通事項、Fはモデルプロジェクトとしている。
 なお、短期的な取り組みの重点事項としては、
 ・ 産業観光ワークショップの開催
 ・ 産業観光シンポジウムの開催
 ・ 産業観光ガイドブックの発行
 などを通じて産業観光の関心を高め、都市間連携を図っていく。

 表 南東北における産業観光推進施策の全体像

地元(市町村、広域圏、県)の取り組み

4県広域での取り組み

@推進体制

意欲の喚起

○地元での産業観光シンポジウムの開催(各地域を巡回しつつ開催)

○産業観光シンポジウムの開催

推進窓口

○産業観光推進体制の明確化(観光担当に機能付加、商工業担当との連携)
○観光担当、商工担当、教委の連携体制の確立

○ 4県自治体の連携体制の確立

連携体制

○産業観光資源研究住民グループの結成
○ボランティアスタッフ(語り部)の組織化、育成(人材募集、研修、登録)
○産業観光コーディネータの設置(個別施設協力依頼、団体受入時日程調整等)

○住民グループ、ボランティアスタッフのゆるやかな組織化(メーリングリスト登録と情報提供等)

A情報収集・提供

○産業観光スポットの情報収集
○産業観光のストーリー検討(テーマ性に基づく産業観光スポットの組み合わせ)
○産業観光モデルプランの作成、紹介
○ HP制作、紹介冊子発行など

○ 4県広域での情報収集、HP制作、冊子発行など
・産業観光モデルプラン紹介
・テーマ性のあるパンフレット制作(例:南東北エコ産業)

BPR、イベント開催

○プレスツアーの開催(旅行ライター等)
○ものづくり体験合宿の企画・実施(旅行会社とタイアップ)
○サイエンス体験合宿の企画・実施

○スタンプラリーの実施(例:鉱石集め)
○ツアーの企画・実施(旅行会社とタイアップ)

C産業観光スポットの開発(協力依頼)

○見学受け入れ可能企業等、教育旅行受け入れスポットのリスト化(協力依頼)
○産業観光スポットのマップ作成
○拠点施設の整備(「工芸村」等)

○産業観光スポットのリスト化、マップ作成
○産業観光受け入れ企業のための損害保険商品の開発依頼

Dビジネス旅行誘致プロジェクト

○見学受け入れ企業リスト化
○観光協会と地元商工関係団体との連携
○各地の異業種交流グループを招いた工場見学会の開催

○ビジネスのテーマ性に基づく、広域での情報提供、視察ツアーの企画
(例:南東北のエコ産業)

E教育旅行誘致プロジェクト

○学習テーマ掘り起こし
○教育旅行コーディネータの設置
○体験学習の指導者育成
○総合的な情報発信
○旅行会社との連携、学校への訪問営業

○広域での情報発信
○教育旅行受け入れ事例の紹介(受け入れ気運づくりのため)
○現地見学会の開催

F産業観光モデル都市プロジェクト

○産業観光推進施策の総合的な推進(例:新津市)

○モデル都市における産業観光シンポジウム開催等
○コーディネータ派遣等


【お問い合わせ先】 

東北経済産業局 企画・情報システム室
電話 022-263−1111(内線5541)


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