平成14年度 東北地域における人口減少、
少子・高齢化に対応した新産業創出に関する調査

調査報告書

 

平成15年3月
東北経済産業局

概要

はじめに


 本調査は、東北地域においても進行しつつある少子・高齢化に対し、産業および地域の活力を維持・拡大するために必要な方策に関しての検討を行ったものである。
 調査にあたっては「東北地域における人口減少、少子・高齢化に対応した新産業創出に関する調査委員会(委員長:吉田浩 東北大学経済学部助教授)」を設置して行った。

 

1.東北地域における少子・高齢化の現状と影響


(1)東北地域における少子・高齢化の進展

 東北地域における高齢人口割合は、全国傾向を上回るペースで上昇を続けると予想されており、全国に先駆けた少子・高齢化対策が求められている。

高齢人口割合の推移(全国:東北地域)

グラフ:高齢人口割合の推移

資料:総務省『国勢調査』、国立社会保障・人口問題研究所『都道府県の将来推計人口(平成14年3月推計)』
注:推計部分は中位推計

 

(2)少子・高齢化の影響と産業に求められる対応

影響1:市場ニーズの変化

 若年層市場の縮小、高齢者ニーズの拡大等の市場ニーズ変化が生じ、医療・福祉用具等の専門的分野にとどまらず、すべての業種において「高齢者にも配慮したデザイン(ユニバーサルデザイン)」が求められる。

影響2:社会システムの変化

 生産年齢層が高齢者層を支える従来のシステムから、高齢者本人も含めた皆が働き支え合う自助的な社会、自地域の問題は自地域で解決した自立した社会への変革が必要となる。

産業に求められる対応

 以上を踏まえ、少子・高齢化に対し産業に求められる対応としては、「高齢者ニーズへの対応」「地域問題の解決」「高齢者および女性雇用の促進」の3点を想定する。

2.東北地域における製造業およびサービス業の現状把握(アンケート結果)


(1)東北地域における製造業の現状

 およそ50%の企業が高齢者対応商品に関心は持っているが、発売・開発などの実際の取組みを進めている企業は非常に少なく、高齢者対応商品に関する取組みが活発に進められているとは言い難い。
 また、中小規模企業において関心が高い、取組みを進めている企業における取組みのきっかけは自主的・自発的なきっかけが多い等の傾向があり、企業規模に起因する課題の排除、自主自発的な企業の取組み促進等が対策として求められる。

高齢者対応商品への関心 高齢者対応商品に関する取組み状況
グラフ:高齢者対応商品への関心、高齢者対応承認に関する取組状況

 

(2)東北地域におけるサービス業の現状

 収入・売り上げ面では業績好調と回答する割合が高く、また、今後の経営戦略においてもサービス内容の充実・改善をあげる意欲的な事業者が多い。
 また、営利法人とNPOの間には、サービス提供に取り組んだきっかけ、提供サービスの利用者、資金調達方法などの面で違いが存在しており、両事業者の特性を踏まえ、それぞれの課題解決を目指した支援策を検討する必要がある。

経営の状況(サービス業)

グラフ:経営状況(サービス業)

 

3.東北地域における高齢者ニーズの把握


(1)ニーズの大きさ

 東北地域に居住する高齢者(50歳以上)に対するアンケート結果(回収403件)では、約半数が高齢者対応商品・サービスを不要と回答しており、ニーズが顕在化しているとは言い難い状況である。
 しかし、自分自身が高齢者を介護した経験を有する回答者においては、介護時に商品・サービスの必要性を感じなかったとする回答は30%程度にまで減少し、介護を行う立場においてはニーズが認識されている。

(2)ニーズの内容

 日常生活の中や身体部位別に高齢者は様々な不便を感じている。製造業事業者が認識している「解消すべき不便」と比較すると、運動神経の低下に起因する不便、視力低下に起因する不便、理解・判断力の低下に起因する不便等において、多くの高齢者が不便を感じている一方で製造業事業者においては認識されていないというミスマッチが存在している。

高齢者が感じる身体的不便と製造業における対応意識

表:高齢者が感じる身体的不便と製造業における対応意識

注)
・表中の数字は、製造業、サービス業については、解決すべき不便として上位3つを選択する形式での設問で、各不便要素への回答数を回答者計で割った値
・高齢者については、日常生活における各不便の有無を尋ねる設問で、「ある」と回答した回答者数を回答者計で割った値
・太字は回答割合の高かったものとして、製造業・サービス業では、回答割合が20%を超えるもの、高齢者では回答割合が50%を超えるものを示している。

 高齢者本人における高齢者対応商品へのニーズを顕在化させるためには、高齢者意識と製造業事業者の認識のミスマッチを解消し、高齢者ニーズに応える製品を開発・製造する必要があり、製造業における高齢者ニーズの把握を促進することが重要である。

(3)高齢者就業ニーズ

 過半数の高齢者が就業意向を持っており、1万人未満の小規模都市に居住する高齢者や子供と同居している高齢者などにおいて特に就業意向が高い。就業条件としては、労働時間・勤務日数の柔軟性、知識や経験の活用できる就業内容等への希望が多い。
 企業における高齢者雇用の状況としては、高齢者向けサービス業では、製造業と比較して雇用割合が低い状況であるが、今後の雇用意向が高く、将来の高齢者雇用の受け皿として期待される。

高齢者が感じる就業環境の課題
グラフ:高齢者が感じる就業環境の課題

(4)女性就業の現状

 就業経験を持つ女性の過半数は今後の就業意向を持っており、就業環境としては、家事との両立(就業時間の柔軟性)、再就職制度の改善、介護との両立(柔軟な休暇取得)等があげられている。
 企業における女性雇用の状況としては、製造業・高齢者向けサービス業ともに70%以上の企業において雇用実績があるが、高齢者向けサービス業のうちNPOに関しては、労働条件の改善に向けた取組みが低調となっている。

女性が感じる就業環境の課題

グラフ:女性が感じる就業環境の課題

 

4.産業における少子・高齢化対応の課題


(1)製造業における少子・高齢化対応の課題

○高齢者ニーズの把握不足

 高齢者が日常生活で感じる不便と製造業事業者の意識にはギャップが存在している他、杖などの狭い分野ばかりが高齢者対応商品として意識され、ニーズへの対応が十分になされていない。
 高齢者ニーズの把握は、高齢者本人の声をいかに掴むかが重要であり、高齢者対応商品を製造する企業では、高齢者介護の現場との接点を積極的に持ちながらニーズ収集に努めている。

○受注・販路開拓ノウハウの不足

 アンケート調査において最も多くの企業から回答された課題であり、施設関係者・流通事業者等、エンドユーザーへの商品情報提供を行う中間ユーザーを意識したプロモーション、異業種・同業種事業者との連携による販路開拓等の取組みが求められる。

○産学連携・共同研究の課題

 特に中小規模企業においては、同業他社、異業種、あるいは研究機関などとの連携を進めることで、自社単独での対応が難しい様々な課題が解決される可能性も大きいと思われるが、民間企業と研究機関の意識や研究ペースの違い等から、産学連携・共同研究が効率的に進められていない状況もある。

(2)サービス業における少子・高齢化対応の課題

○営利法人における課題

 公的サービスとの競合や、住民における行政サービスへの期待が大きく営利法人に対する認知度が低い等の地域特性、採算性確保のために必要な人口規模やひとつひとつの事業を立ち上げていく必要があり一気に拡大展開することができないといった事業特性などから、円滑な参入(新規参入)が難しいケースが存在している。

○NPOにおける課題

 担保物件や個人保証人等の条件が厳しく借入れによる資金調達が難しい、事業内容や事業開始時期などによって公的な融資の申請が認められない等の資金的課題が存在している。
 また、法人格を取得することにより、それまでは不要であった労務管理、会計管理が必要となり、スタッフの負担が増大する、NPOの会計処理等に精通した専門家が少なく外部専門家への委託が難しい、業務内容が柔軟であるため処理方法が業務によって異なり煩雑となるなどの課題も存在する。

○その他の課題

 質の高い人材が必要であるため、口コミでの紹介や面接などによる適正の判断が必要となり、人材確保は容易ではない、収入条件面ではどの職場も格差がなく、スタッフは理想とする介護が行える職場が見つかれば転職することが非常に多い、要介護者の多くが女性であるため、男性介護士への需要は非常に少なく、男性の雇用は現状では厳しい状況である等の人材面での課題が存在する。
 また、医療現場における介護サービス提供、新たな介護方式を取り入れた場合、ハード面・ソフト面の条件が既存の制度の対象外となる場合があり、規制緩和の必要性もある。

産業における少子・高齢化対応の課題

産業における少子・高齢化対応の課題

 

5.東北地域における少子・高齢化対応のイメージ


 自地域内の問題を自地域で解決する自立した地域の形成を目指し、高齢者サービス供給における官民の役割分担による政策資源投入の効率化、高齢者ニーズの的確な把握による高齢者向け製品開発における不確実性の減少等、各方面における効率性の向上を図る。
 効率性の向上には、製造業・サービス業・地域住民等、各主体間の連携を強め、高齢者ニーズをはじめとする様々な情報を共有することが鍵となり、行政には主体間の連携促進と、各主体による活動の側面支援を行う役割が期待される。

目指すべき地域像のイメージ

目指すべき地域像のイメージ

 

6.少子・高齢化への対応に向けた支援策の検討


(1)高齢者対応商品の開発に向けた様々な主体間の連携促進

 「ニーズ把握」「研究開発」「販路開拓」等の各段階において、製造業とサービス業・医療福祉機関・研究機関・高齢者の各主体との連携を促進し、自社単独では対応の難しい様々な課題の解決を図る。
 取組みにあたっては、それぞれの段階で必要となる主体との連携を促進するほか、円滑な連携を実現するためにコーディネーターを配置し、効率的な取組みとする必要がある。

(2)地域問題解決に向けた新たなサービス提供主体の創出

 NPOに対しては、補助金・助成金・融資活用の円滑化・税制支援の拡充等の資金的支援や、外部専門家への仲介・NPO支援人材の育成等を通じたマネジメント支援を行い、活動の側面的な支援が求められる。営利法人に対しては、提供サービスの公的評価の実施・行政による事業者情報の提供・PFI等の事業手法の活用等による新規参入の円滑化が必要である。

(3)サービス人材の確保

 人材育成のための研修・講習に対する助成制度等の人材育成支援、NPOへの人材交流・流動を促進するためのNPOへのインターンシップ制度や企業研修受け入れへの支援、高齢者向けサービスにおける男性雇用を促進するための新たなサービス形態に対する規制の緩和等、高齢者向けサービスの現場におけるサービス人材の確保に向けての取組みが必要である。

 

報告書ダウンロード

 

概要編(PDF:105KB)

本編(PDF:931KB)

資料編(PDF:2646KB)

 

お問い合わせ先

 

東北経済産業局 総務企画部 企画課

TEL:022−263−1111(内線5129) FAX:022−261−7390


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