プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 工法転換を実現する精密薄板プレス鍛造複合加工 技術の開発
対象となる川下分野 家電メーカー
川下企業における
ニーズの対応
精密化、微細化 低コスト化 環境配慮
上記ニーズに対する
具体的な数値
事業化状況 事業化達成(製品として出荷)
対象としている素材 金属、プレス加工
採択年度 平成23年

プロジェクトの詳細

プロジェクトに至った背景・経緯

 HDDはさまざまな用途に対応するために異なるサイズのHDDが商品化されており、小さなものではコンパクトフラッシュサイズのマイクロドライブ等もある。
 しかし、最近、新たな情報蓄積装置としてフラッシュメモリ(SSD:表1参照)が登場し、2006年以降、急速に大容量・低価格化したことによりカーナビゲーション、ゲーム機などに搭載される等、SSDとHDDとの競争激化により、1.8インチ以下の小型HDDが順次市場から縮小しつつある。
 また、1990年代以降、3.5インチサイズが現在のデスクトップパソコン(据置型)やサーバ向けに主流であったが、パソコンの構成比が年を追うごとに大きく変化したことにより、小型化と厳しい使用環境が求められるノートPC用に耐衝撃、耐振動性に優れている2.5インチサイズへの移行が進んだ。
 さらに、サーバー系は、年々増大する情報量に対応するために急速に小型・大容量化が進み、消費電力及び排出熱量の削減が最重要課題となっている。
 そのため、3.5インチに比べ容量あたりの価格は高いものの、消費電力が少ないことから3.5インチから2.5インチへのシフトが進行しており、更なる2.5インチHDDの高度化が求められている。
 
 しかし、ハードディスク(HDD)は、年々性能向上が図られているにも関わらず低価格化が進行している。
 このような価格競争が厳しい環境下では、新たな記憶方式の採用等により大容量化が達成されたとしても、価格上昇は期待できない。
 したがって、HDDを構成する基幹部品「基台」等にコストをかけることは難しいだけではなく、現状の生産工法効率化等の工夫による原価低減活動では継続的な低価格化攻勢に対応できない。
 そのため、従来工法と比較して無駄が少なく生産性に格段に優れた工法への転換等パラダイムシフトが求められている。
 
 HDD 駆動時内部のヘッドとディスクの浮上量は10 ナノメートル以下、「ジャンボジェットが地表1mm を高速飛行するようなヘッド滑空制御」が必要となる等、HDDの製造プロセスは非常に高度なレベルでの造り込みが必要となっている。
 そのため、製造メーカーは数社に限られた寡占状態となっている。
 特に、ハードディスク(HDD)を構成する基幹部品「基台」は、規格化された限られた外形サイズの中に必要な構成部品を保持することが必要とされると同時に、スピンドルやスイングアームピボットの取り付け部は特に高い寸法精度を要求される。
 また、フレーム内部は空気の流れをコントロールする形状に作られており、ダストトラップと呼ばれる部品に空気を誘導して、内部で発生した塵をトラップで永久に固定する等密閉性が必要とされることから、必然的に高精度な各構成部品取付寸法と厳しい平坦度を有する板形状部材となる。
 また、「スラストプレート」は、ディスク等が高速回転(7200回転/秒)することにより発生する横荷重に対してスピンドルを保持するための重要部品となるため、厳しい平面度及び孔寸法精度が要求される。
 
 このように、HDD製造に欠かせない「基台」「ヘッドアセンブリ」等基幹部品は、HDDの大容量化だけではなく低騒音化,低消費電流,耐衝撃性等高性能化に対応するために、従来以上に限りなく厳密な精度で量産することが要求されている。

研究開発のポイント

ハードディスク(HDD)は年々性能向上が著しく低価格化も進行している中で、最も普及が期待される2.5インチサイズHDDの基幹部品では、「基台」が大量のエネルギー(熱)消費が伴なう「鋳造」と無駄な材料廃却と数千台の工作機械が必要となる切削加工にて製作され、「スラストプレート」では追加加工(研磨加工)が必要となる等従来工法では抜本的な改善・解決が難しく、無駄が少なく生産性に優れた新工法への転換が必要不可欠となっている。
 
本研究では、2.5インチサイズHDDの基台及びスラストプレートを切削・研磨レスにて薄鋼板より製造できる冷間プレス加工(精密薄板プレス鍛造複合加工)技術により工法転換を実現させ、新たな技術の普及促進を図ることによりプレス部品製造に携わる中小企業の成形技術力の底上げに貢献する。

研究開発の具体的な成果

2.5インチサイズHDDを構成する基幹部品「基台」に関して、既設のプレス機械を使用した順送による連続生産を折り込んだプレス金型を設計し、実際に製作及び成形実験を行なうことにより、HDD構成部品を取り付けるための複雑な凹凸形状に対する板厚0.6㎜薄鋼板によるプレス成形性を確認した。
「スラストプレート」に関しては、製造メーカーの機能要件をもとに部品形状を定義し、成形性を考慮して複数工程を有するプレス金型を設計した。
また、精密薄板プレス鍛造複合加工にて発生する大きな歪み勾配と応力勾配に下におけるクラックの発生やその伝播の予測に対応するために、破壊現象モデルの定義とその破壊現象モデルに対するパラメータ取得のための材料試験方法を検討し、実際に選定された材料に対して材料試験を行なうことにより材料パラメータを取得した。さらに、2.5インチハードディスク(HDD)部品「基台」に関してHDDとして機能上重要部位となるバーリング部に対して成形シミュレーション解析を行ない各成形工程での解析結果を評価することにより、適用方法及び技術的課題を明確にした。

① 精密薄板プレス鍛造複合成形性限界値の検討
ⅰ) 材料の機械的特性に関する把握 
「基台」用として選定された材料を用いて単軸引張試験を行うことにより、破壊現象モデル定義作業及び成形シミィレーション解析時に必要となる材料データを取得できた。

ⅱ) 破壊現象モデルの定義
材料データをもとに単軸引張試験と同条件にて成形シミュレーション解析を行ない、実際の試験結果と比較することにより、CockcroftとLathamによる延性破壊条件式のパラメータを同定した。

ⅲ) 成形シミュレーションプログラム開発
精密薄板プレス鍛造複合加工において重要となる静水圧の影響を取り扱うことができる弾塑性FEMを採用し、バーリング部の成形解析により破壊の理論を取り込んだ成形シミュレーション動作確認を行なうことができた。

② 2.5インチサイズHDD用部品(基台及びスラストプレート)プレス成形技術の開発
ⅰ)「基台」「スラストプレート」に関するプレス成形方法の検討
従来の1.8インチサイズHDD用基台における成形加工データ実績及び材料の機械的特性値等をもとに、2.5インチサイズHDD用基台用プレス金型及びスラストプレート用プレス金型を設計することができた。

ⅱ) 基本形状に対する成形限界の把握(平面度2/1000㎜以下、バーリング穴(φ10㎜)に対する真円度10/1000㎜以下及び円筒度10/1000㎜以下)
既設のプレス機械に即して設計・製作された2.5インチサイズHDD用基台用プレス金型を使用したプレス成形実験を行ない、成形性を確認することができた。

③ 汎用プレスを利用した連続生産自動化技術の構築
ⅰ) 連続生産自動化に向けた搬送方法の検討
既設のプレス機械を使用した順送による連続生産自動化を仮定して、「基台」のプレス金型設計を行なった。

④ 2.5インチサイズHDD用部品(基台及びスラストプレート)としての機能検証
2.5インチサイズHDD用基台におけるスピンドルモーター等基幹部品を保持する部位に対して、エンボス形状の有無が剛性に与える影響を構造解析により検証した。

⑤ 成形データベース構築課題への対応 
成形シミュレーション実行時に必要となる材料データに対して、実際に単軸引張試験により取得できるデータをもとに抽出できた。

⑥ 研究全体の統括、プロジェクトの管理運営
開発委員会を定期的に開催し、担当者会議も開発の進捗状況に応じて適宜開催したことにより、開発内容の進め方について研究参加各機関等の間で随時調整を図ることができ、研究を円滑に推進することができた。

利用イメージ、今後の活用が見込める分野・製品等

精密機器のパーツ(主にHDD)

eExpo

https://eexpo.jp/companies/2000252069

J-GoodTech

好事例のご紹介

詳細ページはこちら

事業化への取り組み

知財・広報活動
今後の見通し
当初の目標を踏まえた上での達成度や新たな課題 2.5 インチサイズ HDD用「基台」 では、相手部品を取り付けた際の密閉性維持するめに 必要となる外輪郭の平面領域をできる限り確保することが製造メーカーから要望される等、従来工法での設計形状及び寸法精度が要求されることから、プレス加工での各部位での成形限界及び寸法精度限界に対して定量的評価をもとに、HDD製造メーカー側とプレス加工部品としての形状最適化が重要な課題となっている。

研究開発の体制

事業管理機関 一般社団法人日本金属プレス工業協会
法認定事業者 石橋工業株式会社
研究実施機関 石橋工業株式会社
一般社団法人日本金属プレス工業協会
独立行政法人理化学研究所

PRコメント

薄板鍛造要素を含んだ精密金型設計・製作、精密プレス加工を得意とし、また開発部門を設置しており、開発物件等
お客様のニーズに合わせた試作からの取り組みも可能。

事業の参考となる資料

成果報告書概要版 23120711009_(一社)日本金属プレス工業協会_工法転換を 

企業情報

社名 石橋工業株式会社
所在地 福島県郡山市安積町成田字三渡一番地
電話番号 024-945-3411
業種 金属製品製造業
事業内容 精密金型設計・製作、精密プレス加工、二次加工、溶接、アッセンブリ―等
URL http://www.ishibashi-tec.co.jp/
本プロジェクトに関する問い合わせ先部署名・担当者名 常務取締役工場長 岩崎清二 又は 取締役統括部長 志村精一

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