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出羽桜酒造株式会社;山形のお酒を世界に、そして吟醸を世界の言葉に

東北経済産業局

東北経済産業局では、魅力的で煌めく企業にフォーカスを当て紹介しています。今回は、山形県の地域ブランド力の向上や山形県産日本酒の輸出振興に取り組まれている出羽桜酒造株式会社を紹介します。

天童市の市街地に近づくと見えてくる風情ある茶色の煙突。その趣に惹かれ訪れてみると、町の雰囲気に溶け込んだ昔ながらの造りの醸造棟が目の前に広がります。建物の中に入るとふんわりと鼻を通り抜けるお酒の香り。その芳醇な香りは作り手の想いの結晶でした。

出羽桜酒造株式会社は、地元の住民からの支持を受けているのはもちろんのこと、世界最大級のワインコンテストのSAKE部門の最高賞を史上初めて2度受賞するなど、世界的にもその実力が認められています。また、酒質へ強いこだわりを持ちながらもお客様の手の届きやすい価格を設定する、地域への利益の還元として美術館を設置するといった地域への想いとお客様目線を忘れない心を持っています。地元に根ざし、そして世界からも認められる酒蔵の魅力に迫ります。

出羽桜酒造株式会社の取組について

出羽桜酒造株式会社の歴史と強み

出羽桜酒造では1892年の創業以来、厳選した米をよく磨き、手作りで清酒製造を行っている。1980年に鑑評会用にのみ醸造されていた「吟醸酒」という言葉をラベルに記載し、他社に先駆けて「桜花 吟醸酒」を発売し、市場を牽引している。

その上で今もなお商品開発に力を入れ、吟醸酒・生酒・長期熟成酒・おり酒・古酒・発泡性清酒・低アルコール清酒・氷温熟成酒・アルミ缶入り吟醸酒・ML発酵清酒など様々な種類の酒を発売し、時代をとらえ新しい日本酒の楽しみ方を提案し続けている。また、全国新酒鑑評会において12年連続金賞を受賞するなど、名実共に日本を代表する酒を造り続けている。

地域の中の企業

山形の酒は今でこそ全国的に知られているが、以前の知名度は低かった。1970年代をピークに全国、山形県共に日本酒の消費量が減っていく中で、全国に向けて山形をチームとしてアピールすることが求められた。その一つが、出羽桜酒造株式会社も参加する勉強会「山形県研醸会」の活動である(出羽桜酒造の社長は四代目会長を歴任)。山形県研醸会は山形県内酒造メーカーと山形県工業技術センターが立ち上げ、一丸となって醸造技術を磨き上げてきた。加えて、同センターには、若手社員等の育成のための研修受け入れ制度もあり、この官民一体となった取組により、醸造技術の向上や人材育成を図ってきた。

そのおかげで、2016年12月、特定の地域で造られた酒類や農産物などの品質を国が保証する制度であるGI(地理的表示)制度に「山形」が県として認定された。GIはその産地固有の地理的条件に加えて、一定の製法や品質基準などを満たすことで指定されているものであり、日本酒では、市の単位でGIを取得している地域は見受けられるが、県単位でGIを取得したのは史上初である。このような取組は山形の地域ブランド力の向上に貢献している。GI山形認定酒にGIマークを付与してわかりやすく明示することで、山形県産日本酒へのブランド認知が増すが、このGI山形を広める活動により、高品質の日本酒を求める方からの購買も増加することが期待される。

また、オンラインでの販売が増加している近年、出羽桜酒造も2020年6月からオンラインストアを開設した。出羽桜酒造は卸会社とのつながりの中で成長してきたため、卸を飛ばして利益を得ることはできないという想いを持っており、現在オンライン販売している商品はあくまでも商品を知ってもらうきっかけとなるよう、小容量のお試しセットの日本酒販売に力を入れている。

このように、地域への想いを強く持った出羽桜酒造は山形をより多くの人へ広めるための活動に尽力している。

東北経済産業局の施策に関連した取組、海外展開について

海外展開

出羽桜酒造は国内でもいち早く海外へ目を向け、1997年より輸出を本格的に開始した。現在はアメリカや香港など35か国以上を輸出先としている。ワイン等でも香りを重視する外国人からは香りの高い吟醸酒が人気だという。

しかし、日本酒を海外に輸出するには船便であることから現地の人の手に届くまで時間がかかってしまう。その際日本酒は「酸化」により品質が低下してしまう。この問題を解決すべく、出羽桜酒造では独自の酸化防止技術を開発した。酸化を防ぐ膜脱気装置を開発することでより鮮度の保たれた状態で海外へ日本酒を輸出することを可能にした。しかも、この技術は特許を取得しておらず、多くの業者が使いやすいようにしている。そこには国内外のより多くの人に美味しい日本酒を味わってもらいたいという熱い想いがある。

さらに、出羽桜酒造は世界最大規模のワイン品評会であるIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)で2007年から設けられた「SAKE部門」においても優秀な成績を残している。2008年のIWCで「出羽桜 純米大吟醸一路」が最高賞である「チャンピオン・サケ」を受賞した。2016年には県産酒造好適米「出羽の里」の純米酒「出羽桜 純米酒 出羽の里」がIWC2016の最高賞に輝き、史上初となる2度の最高賞の受賞となった。特に2回目の受賞は山形県が開発した「出羽の里」という酒米を使用した日本酒であり、山形県の日本酒が世界に認められたことが知られることとなった。また、同年にはIWC SAKE BREWER OF THE DECADEを受賞し、過去10年間で最も多くの賞を受賞した蔵に選ばれた。(チャンピオン・サケ2回、トロフィー賞10回、金賞8回受賞)

「吟醸を世界の言葉に」を掲げ、文化としての日本酒を誇り、日本酒を通して山形の魅力を国内外に発信し、観光や消費につなげることで地域の活性化に貢献していく姿勢がみられる。

IWC2010「チャンピオン・サケ」受賞写真

IWC2010においての「チャンピオン・サケ」受賞風景(写真提供:出羽桜酒造株式会社)

酒造組合での活動

4代目蔵元の仲野益美社長は山形県酒造組合会長を務めており、自社の営業活動のみならず、山形県全体の日本酒の振興に取り組んでいる。

その象徴が、先述の「GI山形」の取得である。2016年12月に日本酒分野で初めて県単位で指定を受けるまで、4年を越す歳月を要した。山形県酒の優位性を世界にアピールするため地域ブランドに着目した点や、品質を担保する統一的な基準を満たすため、官民、地域一体の取組みをまとめあげたのは、いち早く海外事業に取り組んだ当社の経験と主導的な役割があってのものである。さらに、2018年にはIWCの日本酒部門の山形開催に尽力するなど、山形の酒を世界に広めるきっかけ作りも行っている。

また、全国組織である日本酒造組合中央会では、海外戦略委員長を務めており、日本酒の海外輸出促進の一助を担っている。

海外プロモーションには、経済産業省のJAPANブランド事業を複数年にわたり活用している。直近では、2018年11月に香港にて「日本酒産地「GI山形」を世界へ」プロジェクトを実施。アジアナンバーワンの日本酒輸出先である香港で、現地飲食店のメニューに、山形県日本酒醸造元13蔵が最適な山形県酒をペアリングして楽しむイベントで、優位性を売り込んだ。一部海外では日本酒メーカーの競争が激しくなっており、差別化が必要となっている。現地の嗜好に合ったきめ細やかな飲み方の提案が、海外で販路を広げるには欠かせない。

また、同年10月にはイタリアでも日本酒GI山形の普及活動を実施した。欧州はボルドーやシャンパンのような地域ブランド保護の先進国である。こうした理解もあって、酒だけでなく食を中心に日本の様々な文化に拡大したイベント「ミラノ・ジャパンフェスティバル」において、山形県の日本酒を紹介する特別講演を行った。

国内の清酒消費量は減っているにも関わらず、酒類の輸出量は年々増加傾向にある。加えて、山形県産酒の輸出量は毎年増加している。JAPANブランド事業での取組みをはじめ、継続的な海外プロモーションの効果が出てきていることがうかがえる。

2018年11月香港にて開催「日本酒産地「GI山形」を世界へ」プロジェクト写真

2018年11月香港での「日本酒産地「GI山形」を世界へ」プロジェクト(写真提供:出羽桜酒造株式会社)

2018年10月イタリアにて開催「VINITALY」写真

2018年10月イタリア最大のワイン展示会「VINITALY」での日本酒GI山形の普及活動風景(写真提供:出羽桜酒造株式会社)

コロナ禍における取組

最近では、オンラインで酒造りを学ぶことができる旅行「オトナの酒学旅行」の第一弾として「山形・天童と出羽桜編」を開催し、仲野社長自ら参加者に対して県産酒、出羽桜酒造の酒造りについて紹介する酒蔵ツーリズムを提供した。コロナ禍で実際に遠方から山形に来てもらうのは難しい中、オンラインを活用した新しい取組である。

仲野社長の真の想いは、オンラインでは体験できない実際の香り等を酒造で体験してもらうこと、山形の日本酒を通じて、山形について知り、産地である山形県を訪れてもらうことにある。

構想していた現地訪問型の酒蔵ツーリズムは、コロナ禍で実施ができずにいるが、オンラインでファンを増やし、いずれ来たる時期に山形県を訪れた観光客を山形県酒でもてなすことに期待を膨らませている。

出羽桜酒造株式会社での酒造りの写真1

出羽桜酒造株式会社における酒造りの様子(写真提供:出羽桜酒造株式会社)

出羽桜酒造株式会社での酒造りの写真2

出羽桜酒造株式会社における酒造りの様子(写真提供:出羽桜酒造株式会社)

会社概要

企業名

出羽桜酒造株式会社

法人番号

5390001004452

所在地

山形県天童市一日町一丁目4番6号

従業員数

50名

主な事業内容

日本酒の製造・販売

補足情報

2016年

2017年

関連リンク

本記事の作成にあたっては、支援機関である山形県工業技術センターからも御協力をいただきました。

このページに関するお問合せ先
東北経済産業局 総務企画部 総務課 広報・情報システム室
電話:022-221-4867(直通)
FAX:022-261-7390
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