2024年2月28日、「中小企業活性化フォーラム~経営危機からフェニックス企業へ ポストコロナの企業支援~」を、仙台市の中小企業活性化センターで開催しました。東北経済産業局の主催で支援機関や支援専門家、経営者ら200名近くが会場やオンラインで参加しました。
支援専門家や支援機関による講演を通じて、ポストコロナにおける事業再生支援に関する最新の施策情報や、支援者の具体的な関わり方、中小企業活性化協議会の支援内容等について紹介しました。また、東北経済産業局で取り組む「フェニックス企業」支援について紹介、実際に「フェニックス企業」の経営者に御登壇いただき、事業再生に関する具体的な経験について講演いただきました。
◯登壇者
中小企業庁 金融課 課長補佐
坪内 謙 氏
ポストコロナにおける中小企業を取り巻く現状と今後の見通し、資金繰り支援の現状と方向性、再生支援の現状と課題、再生支援の今後をテーマに講演。中小企業の資金繰りは改善傾向で、倒産件数もコロナ前の水準に戻ってきた2024年。今後は、さらに再生支援件数の増加、中小企業活性化協議会の機能強化などを図り、支援を拡充する予定。
◯登壇者
株式会社商工組合中央金庫 仙台支店長
黒田 直洋 氏
(株)商工組合中央金庫では、経営サポート部の中に本業支援チームを構築し、本部から経営改善支援を専任で行う職員を置くことで、各支店と連携をしながら支援を実施。支援にあたっては、地域の金融機関や外部機関と密接に連携している。支援事例として、地方の老舗旅館、射出成形品製造会社の支援を紹介。銀行として、資金面の直接支援だけでなく、さらに踏み込んだ本質的支援をどのように行うかといった点にフォーカスして事業再生支援に注力している。
◯登壇者
宮城県中小企業活性化協議会 統括責任者
髙橋 良輔 氏
中小企業活性化協議会は「中小企業の駆け込み寺」として、47都道府県に設置されている公的支援機関。収益力改善支援、経営改善、事業再生、そして再チャレンジ支援まで、事業者のフェーズやお悩みに応じて支援を実施。相談件数の推移としては、コロナ禍を迎えた後から急増。今後は、支援機関との連携を強化しながら、「中小企業の駆け込み寺」を標榜する協議会として、広く県内事業者の支援にあたっていく。
◯登壇者
ヒロパートナーズオフィス 代表 中小企業診断士
五島 宏明 氏
支援を希望される事業者が、どんな気持ちで支援を求めるのか、まずは安心させること、十分な信頼関係を醸成することが肝要。相手の話をしっかりと聞き(傾聴)、相手の立場に共感し、対話を経て考えが整理されたところで提案を行うことが大切である。日別資金繰り表の作成は事業再生の第一歩であり、経営デザインシートやローカルベンチマーク等の対話ツールを活用し、「対話と傾聴」を意識した支援を、ともに取り組んでいただきたい。
◯登壇者
アルファ電子株式会社 代表取締役社長
樽川 千香子 氏
2023年1月に父から事業承継された、3代目の代表取締役社長。創業より、バブル崩壊やリーマンショックなど様々な経営危機を乗り越えてきたが、東日本大震災を機に窮地に。自転車操業を繰り返す状況から、事業再生フェーズを経験し、社内改革を行って新たな業種(米粉麺の製造)にチャレンジ。過去の経営危機を糧に、今後も大きな変革に挑戦する。
◯登壇者
東北経済産業局 産業部長
齋藤 芳徳
外部要因や人手不足等による経営環境変化が東北地域の企業にも大きな影響を与えている昨今。過去に経営危機に直面する中で事業再生に取り組み、新たな成長を実現した企業を「フェニックス企業」と称し、経営危機を乗り越えた経験の価値化と社会へのシェアに取り組んでいる。このたび、東北地域のフェニックス企業10社の経営者に取材を行い、事業再生時の経験や想いを詰め込んだ「フェニックスモデル事例集」を作成。経済産業省では、再生支援と成長支援に両輪で取り組む。
◯ファシリテーター
東北経済産業局 産業部長
齋藤 芳徳
◯登壇者
アルファ電子株式会社 代表取締役社長
樽川 千香子 氏
株式会社商工組合中央金庫 仙台支店長
黒田 直洋 氏
ヒロパートナーズオフィス 代表 中小企業診断士
五島 宏明 氏
宮城県中小企業活性化協議会 統括責任者
髙橋 良輔 氏
髙橋氏
-コロナ禍を経て、事業者の状況や意識の幅がさらに広がったと認識。支援者側としては、相談ニーズを整理し、まずは事業者が何を求めているのか、どのような支援であれば実効性が高いのかなどを意識しながら対応していくことが重要。
五島氏
-重要なのは、資金繰り支援。メイン銀行や税理士が主体となり、コロナ禍で複雑化している借入金を明確に分け、事業者が身の丈に合った返済をできるように支援する必要がある。
黒田氏
-“銀行”という枠組みにとらわれることなく、これまでより、さらに踏み込んだ支援が求められると考える。支援機関側が、組織として、事業再生支援=本業支援だと強く自覚をもてるかどうかが鍵なのではないか。
樽川氏
-10年おきに金融危機が生じている時代、経営危機に直面してから対策するのではなく、危機に直面することを想定して常に経営の体幹強化を図ることが大切。一人で動ける範囲は限られており、普段から適度に「危機感の共有化」を社内で進めた方が良いのではないか。
黒田氏
-自然災害に限らず経営危機はいつ生じるか分からない時代、起業経営者が健全な危機感をもつことは当然、意識的に事業そのものを分散させることも検討いただきたい。金融機関が最も恐れるべきは、企業から何も情報共有されない状況である。
樽川氏
-事業再生フェーズにおいては、過去に経営危機を乗り越えた功績にとらわれすぎず、時代の変化に柔軟に対応すべき。事業再生を経験していなければ、コロナ禍では人繰りや借入金コントロール不能であっただろうし、事業再生をきっかけに自社を見直し、何が強みであるかを再確認できた。
髙橋氏
-事業再生について、自社を見直す、資源の集約や効率化の機会であると、ぜひ前向きに捉えていただきたい。
五島氏
-経営危機に面と向き合い、正しく会社を評価することが、「フェニックス企業」への第一歩であると考える。
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東北経済産業局 産業部 中小企業課
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