自治体関与型の事業承継支援モデル構築・展開事業
東北経済産業局と中小企業基盤整備機構東北本部では、東北地域における中小企業の事業承継支援を面的・効果的に進めていくため、2022年度から基礎自治体と連携した取組を開始しています。
この取組は、自治体が地域の事業承継課題を認識し、自ら支援に取り組み、また地域の支援機関のハブとなるような「自治体関与型」の支援体制の構築を目指してモデル事業を展開するものです。
自治体関与型の事業承継支援モデル

東北経済産業局と中小企業基盤整備機構東北本部では、東北地域における中小企業の事業承継支援を面的・効果的に進めていくため、2022年度から基礎自治体と連携した取組を開始しています。
この取組は、自治体が地域の事業承継課題を認識し、自ら支援に取り組み、また地域の支援機関のハブとなるような「自治体関与型」の支援体制の構築を目指してモデル事業を展開するものです。
自治体や住民が必要だと考える企業やサービス、いわば「地域のアイデンティティ」が、後継者不在のために、続々と廃業の危機を迎えています。
例えば、この町唯一の個人商店、伝統工芸品職人、温泉街の旅館など、自治体や住民から必要とされている地域企業は多く存在していますが、こうした企業やサービスというのは、行政や民間企業の事業承継支援ターゲットから外れている可能性が高く、十分な支援が受けられていないのが現状です。
このような『惜しまれながら廃業』は、もはや1企業の問題ではなく、自治体の将来的な在り方と一体で、地域に必要な事業の承継支援に取り組むことが必要です。そのためには、自治体がプッシュ型で地域のニーズを掘り起こし、積極的に事業承継課題に関与することが必要不可欠です。
2022年の休廃業・解散件数は49,625件(前年比11.8%増)で、2020年の4万9,698件にほぼ並ぶ、過去2番目の高水準となりました。
経営者の平均年齢は上昇傾向にあり、休廃業・解散件数増加の背景には経営者の高齢化が一因にあると考えられます。
下記の表で業種別に廃業を検討する可能性のある企業の割合を見ると、飲食店では4割程度と最も高く、続いて、宿泊業や織物・衣服・身の回り品小売業で廃業を検討する可能性がある企業の割合が高いことが分かります。
資料:(株) 東京商工リサーチ「2021年「休廃業・解散企業動向調査、「全国社長の年齢調査」」
(注)経営者の平均年齢は2020 年までを集計している。
資料 :( 株)東京商工リサーチ「第 20回新型コロナウイルスに関するアンケート調査」(2022 年2 月)
(注)新型コロナウイルス感染症の影響が長引いた場合に廃業を検討する可能性について尋ねたもの。廃業を検討する可能性について、業種別に集計し、上位10 業種を表示している。
東北6県の市町村へ事業承継支援に関する取組をヒアリングしたところ、事業承継支援に取り組むことができていない現状や、意識的・スキル的な問題、役場内での縦割り等の組織的な問題など、さまざまな声が聞かれました。
東北地域において独自の事業承継支援を行っている市町村は、県庁所在地等を除き、ごく限られる状況ですが、一方で「創業支援」では、約180の自治体(全体の約80%)が創業支援計画を策定、自治体主導で各種支援を実施しており、事業承継支援についてもあるべき姿の検討が必要です。
【出典】2022 年6~7月、東北地域の自治体へのヒアリングを踏まえ東北経済産業局にて作成
東北地域における基礎自治体の事業承継支援の取組状況や課題について、アンケート調査を実施しました。
地域の事業承継課題が顕在化している中で、現状では多くの自治体が具体的な施策に反映できておらず、支援を必要とする事業者の把握ができていない状況です。
※アンケートの調査期間:2022年11月28日~2022年12月27日
※調査対象:東北地域のすべての基礎自治体(227)。回収率約85%。
Q2. この数年間に地域の事業承継課題を認識する機会はありましたか
地域内における事業者の廃業や後継者不在などの課題を「認識する機会があった」と回答した自治体は合計68.4% と、地域 における事業承継課題の顕在化が見受けれらます。しかし施策に反映した自治体はわずか17.1% にとどまりました。
Q3. 自治体内の支援体制について
「事業継承の担当部署がない」という回答は11.9%にとどまり、7割近い自治体が「商工観光、農政などそれぞれの部署で担 当している」と回答しました。事業承継支援においては、業務や所管がまたがる関係部署同士が連携して取り組む必要性があると 考えられます。
Q7. 後継者の有無に関する地域内調査を実施していますか
「事業継承の担当部署がない」という回答は11.9% にとどまり、7割近い自治体が「商工観光、農政などそれぞれの部署で担 当している」と回答しました。事業承継支援においては、業務や所管がまたがる関係部署同士が連携して取り組む必要性があると 考えられます。
【出典】自治体職員向け事業承継支援ハンドブックより抜粋(東北経済産業局、中小機構東北本部「事業承継に関するアンケート調査(2022年11~12月)」)
事業承継支援にあたり、都道府県単位で、事業承継・引継ぎ支援センターが運営主体となり、商工団体や金融機関等と「事業承継ネットワーク」を構築しております。自治体が事業承継支援に着手するにあたっては、商工会や商工会議所、金融機関など事業承継ネットワークとの連携を図り、地域の面的支援を進めていくことや、自治体が積極的に取り組む施策(例えば創業や移住定住支援、地域おこし協力隊制度、UIJターン促進等)との連動により、効果的な取組を進めることが重要です。
平成29 年度から早期・計画的な事業承継に対する経営者の「気づき」を促すため、全国に商工会・商工会議所・金融機関等の身近な支援機関から構成される「事業承継ネットワーク」を構築しています。
※プッシュ型の事業承継診断による経営者の事業承継に係る課題やニーズの掘り起こしは過去5年間、累計で約76万件実施。
自治体による事業承継支援の先進事例や成功事例を知り、地域における支援体制構築に向けた「きっかけ」づくりの場を創出しています。
2023年2月に開催したセミナーでは、具体的なアクションを起こした自治体(青森県風間浦村、秋田県北秋田市)の取組成果をトークセッション形式で報告。東北地域の基礎自治体のうち、約25%の自治体(52自治体)が参加し、自治体から大きな関心を集めました。
●事業説明(中小機構東北本部)
●トークセッション1(風間浦村、しもきたTABIアシスト)
●トークセッション2(北秋田市、綴子セリ農家)
(モデレーター: 一般社団法人 地球MD代表理事/山本聖氏)
●事業承継支援ハンドブックについて(ニホン継業バンク/浅井克俊氏)
130名弱(うち、東北地域の52自治体が参加※の25%弱の自治体数)
セミナーの様子(会場:仙台市青葉の風テラス)
METI Channelにて公開中の動画へ
自治体が事業承継支援に着手する際に、有効な取組やどのような課題に直面するか等の検証、他の自治体へノウハウを展開することを目的に、事業承継支援モデルの実証事業を実施しています。2022年度は青森県風間浦村、秋田県北秋田市の2自治体が、2023年度は宮城県東松島市、山形県上山市、山形県酒田市、山形県鶴岡市、福島県郡山市、福島県石川町の6自治体が参画しました。実証を通じて、地域内事業者への事業承継支援ニーズ調査、支援機関や金融機関と連携した支援体制の構築、オープンネームプラットフォーマーや観光DMO、JAとの連携、啓発セミナーの開催、広報媒体の作成を行いました。
実証自治体を対象としたワークショップでは、自治体同士のネットワーキングや、事業承継支援の解像度向上につながりました。
基礎自治体の関与による事業承継ネットワーク支援効果最大化。
事業承継問題という分野横断的なテーマについて、他省庁や自治体施策等との横断的な支援モデルを示すことにより、地方の包摂的な成長にコミット。
地域継承型 M&Aを担うべき地域プレイヤーとその手法についてのロールモデル展開。
東北経済産業局では、「事業承継支援にどのように取り組めばよいか」という自治体の課題に対し、事業承継支援の基礎知識、自治体が提供できる価値、担当者に求められる役割・スキル、連携する支援機関、自治体による選考的な取組事例等を整理したハンドブックを発行しました。
また、2023年7月には、ハンドブックの内容をもとにセミナーを開催しました。
ハンドブックを見る
自治体関与型の事業承継支援が全国に広がっています。九州経済産業局及び中小企業基盤整備機構九州本部では、2023年12月に「地⽅創⽣×事業承継Meetup 〜⾃治体関与型事業承継⽀援の必要性と可能性〜」を開催しました。
自治体の関与により、様々な関係者が一体となり、地域全体で事業承継支援に取り組む事例が全国で増加しています。
イベントページを見る
東北経済産業局 産業部 中小企業課
〒980-8403 宮城県仙台市青葉区本町3-3-1
TEL: 022-221-4922
MAIL:bzl-tohoku-shokei@meti.go.jp