RESTART TOHOKU -再挑戦の価値が認められる社会を、東北から-

PHOENIX CASE:ニッチ技術ものづくり企業×法的再生を乗り越え成長へ

倒産による風評被害には目もくれず、
独自の技術を磨くことに注力しました

プレファクト株式会社

代表取締役 白田良晴氏

親企業の影響を受けて倒産の危機に直面

 電子部品の中に入っている半導体をつくるとき、集積回路の幅をなるべく狭くして密集させることで、性能の向上が図られるわけですが、その幅が狭まるほど精密な位置決めが求められます。回路を正しい位置に導くために使われるものがガイドレールで、当社は主に特注のガイドレールをつくっています。クライアントのどんな要望にも応えられる技術が当社の強みであり、ニッチな分野であることから、競合する会社が少ないのが特徴です。
 この会社を立ち上げる前には、父が創業した株式会社白田製作所という会社があり、堅実な仕事によって経営は順調でした。しかし、バブル崩壊に始まるさまざまな要因によって親企業が経営不振に陥り、その影響を受けて、会社が傾いてしまいました。昔は経済が成長していましたから、親企業の言う通りにやっていれば、安定した経営を続けられたのです。しかし、その要望に応えるために新工場用の建物を購入したり、設備投資をしたりしたことで、ますます債務が増えていきました。1997年、アジア経済ショックが発生すると、工場拡大時の債務が重くのしかかり、ついに銀行から借入ができなくなってしまいました。このピンチにも親企業から助けてもらえることはなく、このままでは倒産してしまうというタイミングで、1999年、山形地裁に商法和議(現在の民事再生法)を申請したのです。私が病気がちの父から社長を引き継いだのもこの頃でした。

思いを断ち切って臨む会社清算の厳しさ

企業再生が始まると、その噂は一斉に知れわたり、銀行取引停止処分を受けていないにも関わらず、預金さえも断られる始末でした。このようにマイナスイメージが想像以上に大きかったことから、企業再生を断念し、事業再生に方針を変更、父が創業した会社を整理して、そのあとにプレファクトをつくりました。それが2006年です。
 会社の再生と整理は、顧問弁護士と公認会計士に助言をもらいながら、私がすべての再生計画を作成しました。仕事の関係者に迷惑をかけたくないと考える父には、ドライな決断が要求されるこの仕事はできなかったと思います。古い考え方、例えば周囲の目や体裁を気にしたり、昔からの慣習や親企業に対する思いを断ち切れるかといえば、父にとってそれは簡単ではなかったでしょう。私自身は、とにかく社員とその家族を路頭に迷わせてはいけないという一心で行動しました。会社を縮小する前に人員整理を行った経験からも、社員の雇用を守ることを目的に、やるべきことを進めました。
 また、企業を再生し取引を継続することによって、ご迷惑をお掛けした方々にお返しをすることも忘れてはいけません。

東北最大の銀行がメインバンクに

 倒産した会社の社長がつくった会社は、新しいものであっても受ける風評被害は相当大きいものでしたが、それにめげずに自分たちの精密加工技術に磨きをかけることだけを考えて、今日まで歩んできました。当然、景気の波はありますが、事業は順調に伸びてきたと思います。しかし、当社にはメインバンクがありませんでした。
 その経過を見て、評価をしてくださったのが、東北最大の銀行である七十七銀行です。2017年、グループ会社が運営するファンドを通じて資本金の半分を投資してくださることになりました。デューデリジェンスを受け、問題がないと判断されて、七十七銀行がメインバンクになったことで、これまでのイメージである「倒産を経験しているからつき合えない悪い企業」から「あの銀行が大株主ならいい企業かもしれない」に転換できた瞬間でした。しかし、だからといって油断は禁物です。経営が上手くいかなくなれば一瞬で信用を失いますし、すべて社長である私が責任を取らなければなりません。その覚悟が必要であること、そして、経営に関する知識と自分の会社でつくっているものに関する技術の知識は、ある程度、高い水準のものをもっていなければ、経済の変化には太刀打ちできないということを痛感しています。以前から大学と連携して、研究や商品開発などを行ってきましたが、仕事とは別に「いまの経営学」を学びたいと考え、大学院にも通いました。金融機関の言っていることが、本当に正しいのかを判断するためであり、理論武装をするためです。さらに、他社にはない独自の技術を磨くためにも、日々学び続け、生産技術に関する知識のアップデートを図っています。

 会社の清算や企業再生では、ご迷惑をかけてしまった方もいますので、大きなことは言えないのですが、アドバイスとして申し上げるのであれば、次のようなことになるかと思います。先ず、本業で儲かっていること、営業利益が必要です。営業利益が確保できれば、赤字の原因を除去して再生可能性が高くなります。また、民事再生を行ったとしても、実際に再生できる企業は少なく、非常に難しいものだと思います。また、民事再生法を申請するにも、裁判所への予納金や弁護士費用、申請後の仕入資金、給与支払など、現金が必要になるのです。すっからかんになってからでは、事業再生はできません。ですから、会社をどうするのかを見極める時期が大変重要ですし、無理をする前に、早めに相談することが肝心だと思います。地獄の沙汰だけでなく、現実の社会も金次第なところがありますので、会社存続の危機に直面したときに適切な判断を下せるよう、資金的にも精神的にも余裕をもっておくことが必要ではないでしょうか。

今後のVISION

次世代の移動通信システム6Gの設備構築に参画

 現在、全世界的に普及が進む移動通信システム5Gは、近い将来、この性能をさらに進化させた6Gに移行すると言われています。これが、これまでの通信手段より更に進化させたものであることから、6G用の新たな設備が必要になり、整備されていくことになるようです。当社には、特注のビッグガイドとスモールガイドをつくるラインがありますので、この両ラインを使い、6Gに対応した新しい設備に求められる超精密加工分野での付加価値の高い製品を製造していきたいと考えています。これから訪れるであろう6Gへの移行の波にスムーズに乗れるよう、いまから準備を整えておきたいと思っています。

フェニックスのポイント

●法的整理を決意し、苦しい局面でも独自技術を磨き続け、下請け依存からの脱却を実現。

●外部ネットワークも活用しながら、高付加価値の特殊(ニッチ)分野に特化。「ここでしか出来ない」ものづくり企業に成長。

●事業再生により本業に回帰し、会社として注力すべき軸を見定めたことで、その後、企業が成長に向かっていくためのコアに。

会社概要

プレファクト株式会社

事業内容/ 直線運動軸受、特注ガイドレール、XYステージ、直動関連品、研削品の製造・販売

代表/ 白田良晴

設立/ 2006年

所在地/ 山形県東根市野川2552

電話/ 0237-41-4730

ホームページ/ https://www.prefact.co.jp

◉日本のスイスといわれる環境の東根市野川です

お問合せ

東北経済産業局 産業部 中小企業課

〒980-8403 宮城県仙台市青葉区本町3-3-1
TEL: 022-221-4922
MAIL:bzl-tohoku-shokei@meti.go.jp