RESTART TOHOKU -再挑戦の価値が認められる社会を、東北から-

PHOENIX CASE:地域に愛される菓子製造メーカー×ブランド力を強みにした事業再生

過去と同じ轍を踏まぬよう、
高品質と適正価格の保持に注力します。

株式会社アキヤマ

代表取締役社長 足利芳則氏

長きにわたって愛された商品をなんとか復活させたい

 メン子ちゃんゼリーでおなじみのポーションゼリーをはじめ、ポリドリンク、コーンスナック、チョコスナック菓子の製造・販売を行っています。当社の設立は2008年ですが、これらの商品のほとんどは、2007年に倒産した㈱秋山食品で製造・販売を行っていました。当社設立のストーリーは、この㈱秋山食品が倒産したことに始まります。
 以前、私は㈱秋山食品に勤務していました。解雇になる直前まで、生産部次長として工場の業務を取りまとめる仕事をしていました。当時は、経営陣から会社が危機に直面しているというような、具体的な話を聞いたことはありませんでしたが、給与の支給が遅れたり、賞与も滞ったりするなど、財務面の悪化をなんとなく感じてはいました。倒産する少し前には、私自身、一緒に働いてきた仲間に解雇通告をする仕事も担うようになり、2007年10月、とうとう私を含む大半の従業員が解雇されたのです。倒産の原因については、詳細はわかりかねますが、価格競争に巻き込まれたことが、負のスパイラルから抜け出せなくなった最大の要因なのではないかと分析しています。
 解雇されたあと、失業保険の給付を受けながら生活を続けていましたが、こんなに幅広い年齢層のファンがいるメン子ちゃんゼリーが、会社の都合でなくなってしまうことをとても心苦しいと思うようになりました。工場に残された機械が、スイッチを押せば動く状態だったことも、もったいないという思いを加速させました。その後、紆余曲折を経て2008年1月、私が社長となり、会社をつくってスタートしたのが当社です。

築き上げたブランド力で創業に必要な体制を構築

 創業にはさまざまな困難がありました。機械のオペレーターはもちろん、原材料を調合して味の再現ができる人を含む人材が確保できるのか、創業資金はどうするのかといった課題をクリアしなければなりません。最大の難関は、以前、原材料を提供してくれていた企業と契約が結べるのかということでした。実際、「つぶれた会社の後釜でやるようなところとは、仕事はしない」と門前払いされたこともありました。しかし、地道に根気強く営業活動を重ね、このような状況でも、商品がもつブランド力を認めてくださり、期待を込めて取引を再開してくれるところもありました。同じ理由で、商品を置いていただけるところも見つかりました。そして、会社をつくった年の7月、わずかながら商品を市場に出すことができたのです。
 創業してすぐに、顧問契約を結んだ税理士のサポートを受けて事業計画書などを作成し、日本政策金融公庫の創業支援も受けました。更に、現在メインとなっている銀行からの融資を受けられることが決まり、経営にも余裕が生まれたことで心も安定を取り戻し、徐々に生産する商品の種類や数量を増やすことができたのです。

食品安全マネジメントシステムFSSC22000を強みにして

 創業に際し、心に決めたことがあります。それは、前の会社と同じ轍を踏むことだけは避けなければならないということです。そこで、あくまでも適正価格で勝負することを決めました。その結果、価格は前の販売価格から3割ほど高くなりましたが、味はもちろん、高い品質とブランド力で、取引先の皆さまには、ご理解いただくことができました。大変ありがたいことですし、この適正価格を貫く当社の姿勢が、金融機関からの信頼を得ることにもつながりました。さらに、3年前には食品安全マネジメントシステムの中でも、最もレベルが高いと評されるFSSC22000を取得することもできました。適正価格を、自信をもって提示できるのは、この認証の取得が大きな後ろだてになっています。

 実は創業時だけでなく、経営の危機は何度か訪れました。特に深刻だったのは、東日本大震災の少し前、急速な販路拡大が原因でクレームが増え、それに伴って注文が減少、資金繰りが悪化したときです。このままでは立ち行かなくなると思い、金融機関や支援機関に相談に伺いました。食品業界の動向に詳しいコンサルの方につないでいただき、新しく経営改善計画を策定して、少しずつ経営の内容を見直していった時期があります。中小企業再生支援協議会(現 中小企業活性化協議会)からは、客観的視点で捉えた当社の強みと弱みを教えていただきました。強みや弱みに関しては、当然、自分たちが一番わかっているつもりでした。しかし、改めて外部の方に分析してもらうと、商品のブランド力は、私たちが認識していた以上に強く、それをさらに強化していくことが当社の生き残る道であるという確信を得ることができたのです。この経験があったからこそ、その後に訪れる震災やコロナ禍においても、困ったことがあれば、早期に専門家に相談するという習慣が身についたのだと思います。経営者の皆さんには、日頃からこのような相談相手をつくることを心がけ、必要に応じて支援制度を活用することもお勧めしたいです。経営は常に危機と背中合わせです。不安が胸をしめつけるとき、私はカラ元気でも前向きに、「それでも今日も経営ができているじゃないか」と思うことにしているんです。前向きな気持ちを保つためにも、苦しいときこそ早めに相談することが肝要だと思います。

今後のVISION

好きな人と過ごした情景とともに、記憶に残るお菓子を国内外に届けます

 メン子ちゃんゼリーは、おかげさまで発売から40年が経過し、おじいちゃん、おばあちゃん、お孫さんまで3世代にわたって楽しんでいただける商品になったのではないかと思っています。今後も家族やお友だちと一緒に、「こんな話をしながら食べたよね」といったエピソードや情景とともに、記憶に残るお菓子として、安心・安全に楽しんでいただける商品づくりを目指してまいります。また、前会社時代より、東南アジアを中心として行ってきた輸出にも力を入れ、今後も海外への展開を拡大しながら、末永く愛されるお菓子を提供できるよう、努めてまいります。

フェニックスのポイント

●価格競争が要因となり、脱却できないまま前会社が倒産。

●根強いブランド力を活かしつつ、高品質かつ適正価格の維持により事業体質を改善。

●苦しい局面こそ、支援機関による客観的視点を取り入れ、収益力・経営改善を着実に実行。

会社概要

株式会社アキヤマ

事業内容/ 清涼飲料水及び菓子製造・販売

代表/ 足利芳則

設立/ 2008年

所在地/ 宮城県加美郡加美町字一本杉6番地

電話/ 0229-63-8011

ホームページ/ http://akiyama2008.co.jp

お問合せ

東北経済産業局 産業部 中小企業課

〒980-8403 宮城県仙台市青葉区本町3-3-1
TEL: 022-221-4922
MAIL:bzl-tohoku-shokei@meti.go.jp