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先を見据えた堅実な経営により 地域とともに歩む牛乳メーカーの持続的な成長

会津中央乳業株式会社

専務取締役 二瓶孝文氏

創業の原点は、子どもに健康で幸せに育ってほしいという願い

 当社は、1948(昭和23)年に福島県会津坂下町で創業しました。製品には会津産生乳を100%使用し、こだわりの製法によりまるで搾ったままの生乳をトロトロお鍋で沸かして飲んでいた頃のおいしさ、風味、甘みを実現した牛乳「会津のべこの乳」を軸に、ヨーグルトやチーズなどの乳製品も製造しています。地元に根差した乳業メーカーとして、福島県会津地域を中心に小売店の他、学校給食や病院、温泉旅館などに牛乳・乳製品を届けています。また、ありがたいことに遠方からもニーズをいただき、一部の製品は国内では広島県まで、海外ではシンガポールまで届けています。
 当社の原点には、創業者である祖父の原体験があります。かつて祖父は旧満州で家族と暮らしていましたが、終戦後シベリアに抑留されました。娘は祖母とともに先に日本への帰国を目指していましたが、栄養失調で亡くなってしまいます。当時2歳でした。「あの時、栄養のある牛乳があれば助けられたのではないか」。その悔恨が、戦後の牛乳づくりにつながっています。当社の商品パッケージに描かれた女の子のイラストはその思いの象徴であり、この創業のストーリーは、経営に迷ったときに立ち返る、大切な原点でもあります。

厳しい経営に追い打ちをかけた福島第一原発事故後の風評被害

 会津地域有数の乳業メーカーとして歩んできましたが、1996年に品質事故が発生した際に1か月近くの営業停止処分を受け、販売も製造も止まってしまいました。会社の存続にかかわる大きな出来事でしたが、お客様からの復活を求める声が支えとなって再開を果たしました。その後は、2003年に衛生管理方式「HACCP」認証を取得するなど、安全安心の上に成り立つ美味しいものづくりを徹底しています。
 品質事故による経営危機は乗り越えたものの、元々牛乳は利益率の高い商品でないことから収益が伸び悩み、その後も低調な経営状況を脱却できずにいました。地道な営業活動を重ねるとともに、新商品のヨーグルト「会津の雪」が全国TV番組で取り上げられたことで、浮上する手応えを感じ始めた頃、2011年に東日本大震災が起こりました。
 工場への直接的な被害はほとんどありませんでしたが、福島第一原発事故の影響を受けて、福島県全域に生乳の出荷制限要請がなされたことにより、実際の放射線の数値には問題がなかったものの、当社牛乳の出荷は約1か月間停止しました。会津産生乳100%にこだわってきた当社は、会津産生乳の供給が断たれた状態では生産すらできず、社長の中では廃業も視野に入っていたと思います。
 一方で、スーパー、コンビニでも物資が不足する状況が続いていたことから、当社に直接牛乳を求めに来る方々も多く、栄養ある牛乳を必要とする地域の声に応えるため、知り合いを頼り、岩手県の酪農家から生乳を分けてもらうことにしました。牛乳として販売するにあたり、誇りを持ってきた「会津」の文字をパッケージから外すことはつらい決断でした。
 その後の出荷制限の解除によって会津産の牛乳も生産を再開し、県内での販路は保つことができましたが、県外の販路については、出荷制限中に他社の製品に代替されてしまったり、出荷制限解除後も風評被害の影響を受けて、販路の多くを失いました。当時、売上の半分以上を県外が占めていただけに、将来の先行きの不安は大きなものでした。

計画を立てることにより未来を見据えられる

 一度失った販路を回復することは、新規開拓に挑むことと似ており簡単なことではありませんでした。次第に資金繰りが厳しくなり、2019年にメインバンクの勧めで、中小企業再生支援協議会(現 中小企業活性化協議会)の再生支援を受けることとなりました。
 計画策定のために、専門家に第三者の視点から、財務・事業の両面から自社の経営状況を詳細に分析してもらう中で、課題や対応策について以前から感覚では理解していたことも、言語化され具体的に整理されたアドバイスを受けることにより、「何を、どの順番で進めるべきか」が明確になりました。
 また、計画の策定やバンクミーティングに関わったことで、私も経営を基礎から学び直す機会となり、営業担当としてだけでなく、視点を上げて会社の経営に向き合うきっかけをいただいた思いです。
 苦しくなるとどうしても、今日をどうやって過ごすか、明日をどうやって越えるか、明後日をどう見据えるか、と目先のことで精一杯になってしまいますが、計画を立てることでより先の展望を見据えることができようになり、そうすると少しポジティブな気持ちにもなれました。
 再生に向けた取り組みとしては、牛乳・乳製品の開発・営業の強化に取り組みました。
 営業面では、既存の取引をより太くする営業と、販路回復のための営業を根気強く継続し、そのような中でも決して安売りをせずに、スーパーでの試飲を重ねるなど、製品の良さや特徴、他社製品との違いを伝え、商品の価値そして会社のブランドを高めることに尽力しました。震災から13年を要しましたが、こうした地道な営業活動が実り、2024年にようやく震災以前の全取引先との取引を回復することができました。
 乳製品については、牛乳と比べて利益率の高さ、賞味期限の長さに優位性があり、特にチーズは世界のマーケットにもチャレンジできることからも、牛乳メーカーとして以前から注目していた分野です。これまで、2013年に三菱商事復興支援財団のからの支援を受けて、チーズの製造に着手してきており評判も上々で、今後、経営を支える事業の柱の一つになるよう事業を大切に育てていきたいと考えています。

地域とともに歩む持続的な成長

  会津生乳100%を掲げる当社としては、会津地域の酪農家の存在がとても重要です。高齢化が進み酪農家数が減少する傾向にありますが、誇りや希望を胸に次世代への継承が続くことを願って、酪農家と消費者をつなぐイベント「べこ乳マルシェ」を震災以前から開催してきました。
 マルシェの催しのひとつで、当社の製品「ソフトクリーミィヨーグルト」を題材に「飲みにくいヨーグルト早飲み世界大会」を実施しているのですが、メーカー自身が飲みにくさを自認していることがSNSで反響を呼び、様々なメディアにも取り上げられたことで全国からの注文が相次ぎ、マルシェも毎年大盛況となっています。
 飲みにくいヨーグルトが注目され、当社の認知度も向上し、商品取り扱いの相談も多く受けるようになりました。シンガポールでの販売も始まり、乳製品の海外展開に手応えを感じていますが、一時のブームに乗って製造能力を急拡大することは控え、長い目で見て堅実に挑むようにしています。
 今後、私としては、海外展開の他、東京に「会津のべこの乳」の魅力を発信する拠点をつくることを目標にしており、美味しい牛乳がつくられるこの風光明媚な会津地域の魅力を国内外の方に知っていただき、実際に足を運んでもらうきっかけを生み出せたらと考えています。そのためにも、この会社を長く残し、酪農家、消費者とハッピーな輪を構築していくために、利益だけを過度に追求するのではなく、メーカーとしてきちんと良いものづくりを続け、商品を大事に育て、身の丈に合った経営をこれまでも、これからも続けていきたいと思います。

会社概要

会津中央乳業株式会社

事業内容/ 食料品製造業

代表/ 二瓶孝也

設立/ 1948年9月

所在地/ 福島県河沼郡会津坂下町大字金上字辰巳19-1

電話/ 0242-83-2324

ホームページ/ https://aizumilk.com/

お問合せ

東北経済産業局 産業部 中小企業課

〒980-8403 宮城県仙台市青葉区本町3-3-1
TEL: 022-221-4922
MAIL:bzl-tohoku-shokei@meti.go.jp