RESTART TOHOKU -再挑戦の価値が認められる社会を、東北から-

徹底した数字の分析・改善によって、みんなに幸せを届けるドーナツFC事業の強化へ

会長の写真 社長の写真

株式会社松屋

代表取締役会長 石森慎司氏
代表取締役社長 地主茂氏

長年の収支バランスの崩れと主要事業の低迷

 1952年に和菓子屋として創業以来、地域に根ざして事業を広げ、現在はドーナツブランドのフランチャイズ加盟店として宮城・山形・福島で合計20を超える店舗の運営(以降、ドーナツFC事業)に加え、福島片岡鶴太郎美術庭園やリトリーフアートミュージアム福島などの文化施設の運営など、多角的に事業を行っています。
先代である義理の父の死をきっかけに、27年前に経営を預かった頃から借り入れも多く、財務状況は決して良いと言えない状況が続いていました。その後拍車をかけるように、リーマンショックや東日本大震災、コンビニ各社によるドーナツ販売への参入など、外部環境の変化が続いたことで、事業の売上げは長期的に低下が続き、次第に資金繰りに窮するようになりました。従業員に対する賞与も十分に支給できない状況が続き、それが精神的に大変苦しいものでした。
金融機関には毎月訪問し、経営状況を説明し信頼関係を築いてきましたが、厳しい状況が続くなかで、金融機関から専門家のアドバイスを受けてはとの提案があり、紹介された監査法人との相談を重ねました。判断に悩みましたが、経営体力に見合う返済計画に見直し、収支のバランスの改善に取り組むため、事業再生に取り組む方向性を固めました。それが2018年のことで、当時の私は「リスケ」という言葉すら知らない状況からのスタートでした。

※リスケジュール … 資金繰りを安定させ、事業再生を図るために、借入金の返済条件を変更すること

会長の画像

金融機関・専門家との協働による身の丈に合った再生計画の策定

 再生計画策定に取り組むにあたり、公的な支援機関である再生支援協議会(現:中小企業活性化協議会)にも相談に伺い、その支援決定を受けて計画づくりを進めました。
伴走いただいた監査法人の方々とは、データを分析し、必要な事業の整理・縮小・集中を明確にしたうえで、実行可能な計画に落とし込みました。この時、データから自社が置かれている状況を把握し、社内外への説明のために、きちんと資料化することの重要性を強く学びました。これは今も続けており、現在の経営に大変役立っています。
計画内容の説明のために行うバンクミーティングでは、取引のあった金融機関に、当社の強み・弱みも含めた洗いざらいの分析結果と対応策を示すとともに、経営者としての再生に向けた強い覚悟を伝え続けました。金融機関からは厳しいご指摘やご意見も受けましたが、各行から前向きな姿勢でご支援いただいたことに感謝しています。事実、事業は金融機関との関係があって成り立つため、昔も今も顔を突き合わせる関係性を大事にしてきました。そうした信頼関係のもと、金融機関の目線から受けた助言を真摯に受け止め、一つ一つ改善に努めました。
再生計画に基づく具体的な策として、ドーナツFC事業に集中するため、東京での別事業からの撤退と一部の不動産の売却を行いました。東京の従業員の中には、福島への配置転換を提案したものの、地理的な問題から叶わない従業員もおり、大変心苦しい決断を経験しました。また、ドーナツの販売店舗も採算の合わない店舗は一部閉鎖するなど、経営資源の集中を行いました。
再生計画を実行する過程では、従業員への説明責任や事業整理の判断など、精神的な負荷も大きいものでしたが、「会社の存続=従業員の暮らしを守り、豊かにすること」を最優先する姿勢で臨みました。振り返ってみますと、現場改善と軸のぶれない経営判断が両輪となり、再生の基盤を築く転換点となったと考えています。 

資料の画像

数字に目を向け、利用客の声に耳を傾けた現場の改善

 再生の基盤となったのは、ドーナツ店舗運営を数字に基づいて徹底的に見直したことです。収益管理については一層の工夫を重ねており、現在も週ごとに各店舗の収益分析を行い社内で共有しています。この分析データをもとに実施した店舗における食材廃棄の徹底削減が、改善の大きな原動力となりました。製造量や時間帯別の販売データを分析し、商品ごとの廃棄発生状況を可視化したことで、廃棄原因の把握が進み、製造計画を適正化できました。店長が日々の需要の見通しに基づいた製造を行い、ピーク時間帯に過不足が生じないよう調整したことで、原価率の大幅改善につながりました。こうした取り組みはFC本部からも高い評価を受けています。
また、店舗ごとに立地や客層が異なり、一律の運営では成果が出ないため、各店舗の状況に応じて店内外のレイアウトを工夫し、人流の改善や商品の適切な配置などお客さまにとって快適な店づくりを徹底して追求しました。
そしてもう一つ、忘れてはならないのが、新型コロナウイルスがもたらしたパンデミック下で得た気づきです。当時イートインのお客さまは激減しましたが、テイクアウトが大きく伸びました。「家族で食べるならここのドーナツがいいね」「子どもに持って帰ってあげたい」という声が聞こえてきたことで、私たちの心の中で、ブランドに対する誇りとお客さまとのご縁を大切にしようという思いが改めて強くなるとともに、事業の将来性に自信を高めることができました。
事業再生の経験を通じて、経営判断の前提となるのは事実と数字であり、感情や印象だけで意思決定を行ってはならないことを改めて認識しました。また、専門家や金融機関は助言や分析を提供しますが、最終的な判断と責任を負うのは経営者自身です。失敗や悪化を隠すのではなく、会社の状況を開示し、早期に支援機関や専門家と協働しながら改善策を進めることが、事業の継続可能性を高め、会社を強くするうえで重要であると実感しています。
こうして事業再生期間を経て、おかげさまで財務状況は好転し、過剰債務を解消することができました。そして2025年に地主新社長が就任し、さらなる経営の改革を推進しています。

会長の画像 社長の画像

財務体質の強化と従業員の所得向上を軸とした成長を

 これまでに当社の基幹事業であるドーナツFC事業に経営資源を集中して経営改善に取組み、同業他社を上回る利益率も維持できる状況も見えてきました。これからは、財務状況に見合った投資により、新たな成長を考えるステージに向かっています。当社の経営資源やノウハウを活用した事業展開の手始めとして日本三大ラーメンに数えられる喜多方ラーメンの店舗を令和7年12月に仙台市に新規出店しました。今後とも収益性を重視した新たな店舗運営などの新規事業や、運営する文化施設を観光資源として活用・活発化する取り組みも広げていく考えです。
私たちが最も大切にしているのは、利益を従業員の所得向上につなげ、働く環境を安定させることです。従業員が安心して働き、継続的に成長できる組織をつくることが、会社の持続的な発展につながると考えています。
今回の事業再生を通して、人のご縁に助けていただいたという思いは強くあります。外部の方々からご助言をいただき、経営に対する考えをより深めることができました。当社のこれからの成長のために重要な経験になったと考えています。

2人の人物

会社概要

株式会社松屋

事業内容/ ドーナツFC業(東北エリア21店舗)、喜多方ラーメン坂内事業、松屋レストラン等の食店経営および片岡鶴太郎美術館・リトリーフアートミュージアム福島の運営

代表/ 代表取締役会長 石森慎司 代表取締役社長 地主茂

設立/ 1964年(創業/ 1952年)

所在地/ 福島県福島市飯坂町銀杏1-13

電話/ 024-542-1313

ホームページ/ https://www.matsuya-inc.com

株式会社松屋の看板

お問合せ

東北経済産業局 産業部 中小企業課

〒980-8403 宮城県仙台市青葉区本町3-3-1
TEL: 022-221-4922
MAIL:bzl-tohoku-shokei@meti.go.jp