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杜氏制度を廃止して独学で始めた酒造りが、未来を支える新ブランドに成長

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株式会社山本酒造店

代表取締役社長 山本友文氏

アメリカ留学後に家業が経営危機、債務超過状態で事業継承することに

 私は元々機械エンジンに興味があったので、アメリカの大学で機械工学を先行していました。大学卒業後に東京の音楽プロダクションに就職してアーティストのマネジメントをしていましたから、家業を継ぐつもりはありませんでした。山本酒造は元々父親3兄弟が中心に家業を回していました。父は三男だったのですが、当時代表だった長男の死を皮切りに不幸が重なった時期があり、自分が音楽プロダクションで働いている時に、父親が繰り上げで代表になりました。その頃には既に手に負えないほどの債務超過になっていたようです。父親は自分の代で酒造をたたむ決心をしていたのですが、ある時従業員から呼び出しがかかって「まだ酒造は建て直せる。私たちも一生懸命頑張るから戻ってきてくれないか」と嘆願されました。どうにか従業員の声に応えたいという気持ちもあり、前の会社を辞めて専務として家業の経営に参加することになったのです。
 正直自分はエンジニア志向だったので、財務についての知識はほぼありませんでした。そこでまず頼ったのが税理士です。ただ厳しい意見を沢山受けましたし、金融機関からは追加融資を受けられる状態ではありませんでした。とはいえ支払いは迫っていますから、とにかく不良在庫を売り資金に変えるしかありません。それでもキャッシュフローが回らないときは個人の貯金を投入するしかありません。会社的には私と父親への役員貸付がどんどん膨らんでいる状態でしたので、最終的には税理士さんの判断もあって会社に投入した私財は放棄することになりました。

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杜氏制度の廃止から自社製造への転換、代表就任後の大胆な経営変革でV字回復

 まさにどん底の状態で家業に関わることになったのですが、製造業なので状況を変えるには商品を売るしかありません。こんな時だからこそ従業員一丸となって売れる商品を作りたかったのですが、酒造りの要である杜氏が旧態依然な性格で、新しい酒造りに非協力的な方でした。折り合いが合わず杜氏を解雇して次の杜氏を採用したのですが、状況は改善しませんでした。そこで決意したのです。「自身がやろう、自分たちが作りたい酒を作ろう」と。すぐに杜氏制を廃止して、自分も酒造りを学んで製造に関わることを決断しました。従業員からは反対意見はなく、むしろチームとしてスクラムを組めた気がします。
 杜氏制を廃止する前から通信講座を受けたり教科書を読んだり、と独学で酒造りを学んでいました。いざ自分たちで酒造りするというタイミングでさまざまな同業者や外部専門家にお世話になりました。秋田県総合食品研究センター内には清酒やお米、酵母の専門チームがあって日々最新の研究をしています。そこで最先端の酒造りについてご指導いただいたり、同業の蔵元にも勉強に行ったりしました。必死なのでプライドなんて感じている暇はありません。もちろん会社は債務超過状態ですので、財務面の見直しも必要でしたが、当時金融機関に経営改善計画を持参しても理解は得られず、関係の改善には時間を要しました。ただ、ありがたいことに信頼できる販路は既にありましたから、経営改善のために酒の品質を高めることに注力しました。従業員と一緒に山本酒造の新しい酒づくりを始めた翌年、美味しい純米吟醸が生まれて、翌年から売上は上向き傾向に転じました。これが今の私たちのブランド「山本シリーズ」の始まりです。そこからは生産量が4倍〜6倍と年々成長していき、杜氏制を廃止してから数年で酒造生産量の上限に達したのです。売上げが安定してからは従業員の働く環境を見直し、組織構造をフラットにして全工程を複数人で行う独自のローテーションシステムを確立し、社員のモチベーション向上と行程の属人化防止に努めています。

酒作りの様子

地域資源の創出・地域貢献・インバウンド、次世代への継承も視野に入れた新戦略

 経営危機を乗り越えた経験も踏まえ、とにかく高品質化や酒造りのストーリーにこだわりを持ち続けています。水は世界遺産「白神山地」の伏流水、使う酒米も酵母も同じ水で育った希少な純米酒。世界進出もビジョンに掲げており、現在は年間生産量の30%が秋田県内、60%が東京を中心とした県外、残り10%は海外13カ国に納品されています。また、大手メーカーの様に沢山の商品ラインナップを揃え、生産量を高めるのではなく、小さな蔵こそ尖ることが重要だと考えています。私たちはどん底の状態から自分たちのチームワークと業種を超えた酒好きのコミュニティでの連携により事業再生を成し遂げました。今は年間生産量が規定の上限に達していますので、これからは地域貢献や次世代への事業承継を見据えた事業の多角化を進めています。醸造所の隣に新設した発酵をテーマにしたカフェの運営。そして酒造近くの歴史ある古民家を改装した宿泊施設の運営など。次世代へのバトンタッチのビジョンもできています。

会社概要

株式会社山本酒造店

事業内容/ 清酒製造及び販売・宿泊業・飲食サービス業

代表/ 山本友文

設立/ 1901年

電話/ 0185-77-2311

ホームページ/ https://www.yamamoto-brewery.com/

従業員の皆さん

お問合せ

東北経済産業局 産業部 中小企業課

〒980-8403 宮城県仙台市青葉区本町3-3-1
TEL: 022-221-4922
MAIL:bzl-tohoku-shokei@meti.go.jp