2024年2月21日、リアル及びオンラインで「『惜しまれながら廃業』のないまちへ 一歩をふみだすヒント編 事業承継支援セミナー」を開催しました。当セミナーには、東北のみならず全国の自治体や支援機関等の200名超が参加。事業承継支援の実証事業に取り組んだ6つの基礎自治体によるパネルディスカッションを通じ、事業承継支援に関して、各自治体の実施状況やフェーズに合わせた体制構築や支援を推進するための「ヒント」となるお話を頂きました。
〇ファシリテーター
合同会社イキナセカイ 代表 安川 幸男 氏
東北経済産業局と中小企業基盤整備機構東北本部は、東北地域における中小企業の事業承継支援を面的・効果的に進めていくため、令和4年度より基礎自治体と連携した取組を開始しています。詳細は「自治体関与型事業承継支援」をご覧ください。
〇登壇者
山形県上山市
福島県石川町
パネルディスカッション1では山形県上山市と福島県石川町が登壇。ともに、事業承継支援に対し「何から始めていいのか分からない」という共通の課題をもつ基礎自治体です。基礎調査や啓蒙など、まず「一歩を踏み出すこと」を本実証事業にて取り組んだ両自治体に、今回の実証事業での取組についてご説明いただきました。
<事業承継に関する課題>
総合計画策定にあたり、商工会の役員、各部会の役員へヒアリングを行ったところ、「人手不足」と「後継者不足」の2つのキーワードが挙がった。また、上山市には事業承継に関する基礎的な情報も無く、何から始めればいいのか分からない状況だった。
<実証内容>
【①地域内の事業承継支援ニーズ調査及び掘り起こし】
上山市内企業に経営者の年齢や後継者有無、事業承継ニーズの有無等の基礎的な情報をアンケート。アンケートは614社に依頼し、回答は42%。その内、ヒアリングできたのは10社であった。
【②商工会、金融機関、支援機関等との連携体制の構築】
事業承継に関する支援についてどのような連携があり得るか等の意見交換を実施。各機関へのヒアリングで前向きな回答は得られるものの、まだ具体的な取組にはつながっていない。そのため、各支援機関の得意分野・メリットと感じる部分を十分に把握し、形式的にならない支援策・具体策を検討したい。
<事業承継に関する課題>
事業承継支援の需要が何年も前から叫ばれる中、どこから取り組んでいいのか、また、町内事業者の情報がないことから必要な支援ができておらず、支援が必要だと分かった時には、廃業をしているような状況も大いに考えられるため、町内事業者の情報収集が課題となっていた。
<実証内容>
【①石川町内の事業者向けアンケートの実施】
石川町商工会および福島県事業承継・引継ぎ支援センターとの連携でアンケートを実施。福島県事業承継・引継ぎ支援センターとの連携のもと、専門家の意見を取り入れたアンケートを実施。本アンケートを通じて、今後どのような方向に進むべきか明確となった。
【②事業承継アンケートで相談を希望した事業者向けのフォロー面談の実施】
福島県事業承継・引継ぎ支援センターに石川町職員が同行する形で面談を実施。実際に事業者と面談してみると、アンケートの活字からは分からない、リアルな現場の悩みを聴くことができた。
【③石川町内事業者を対象とした事業承継に関するセミナーの実施】
「オール石川人材確保共催フォーラム」と銘打ち、「人材確保」と「事業承継」をテーマとしたセミナーを開催。
〇登壇者
宮城県東松島市
福島県郡山市
パネルディスカッション2では宮城県東松島市と福島県郡山市が登壇。「事業承継のノウハウが無い」「相談先が分からない」(東松島市)、「自分事として事業承継を捉えきれていない」(郡山市)という課題をもつ両市に、今回の実証事業で行った実証内容及び構築した支援体制のご説明いただきました。
<事業承継に関する課題>
令和4年度より、オープンネーム型のマッチングサイトを立ち上げ、移住・定住施策と連携を取りながら後継者を探す事業を実施していた。当事業の一環として令和5年度に事業者へのアンケートを実施した結果、「承継に係るノウハウがない」「相談先が分からない」などの回答があり、事業承継に対する課題が浮き彫りとなった。
<実証内容>
【座談会の開催】
移住と継業(事業承継)を考える場として、石巻圏域(石巻市・東松島市・女川町)の2市1町で座談会を実施。本座談会では、リアルな声、それぞれの立場から見方の異なる意見を聞くことができた。今後は、提起された意見や、取り上げられた課題を整理した上で、事業承継に関する支援体制を構築していきたい。
<事業承継に関する課題>
市独自の既存の事業承継支援はあるものの、アンケートや個別ヒアリングの結果から、事業承継を「自分事」として捉える経営者がいまだ少ないことが判明し、多面的なアプローチが必要であると思案。
<実証内容>
【①事業承継に関する啓発・広報活動の強化】
令和4年度より構築していた、郡山商工会議所や日本政策金融公庫などとの事業承継支援を通じて、紙媒体のパンフレットを1万部作成し事業者へ配布。支援対象となる経営者には、高齢でデジタルに不慣れな方も多いため、アナログの手段としてパンフレットを活用することで理解度を高めることができた。
【②ポータルサイトの連携強化】
郡山市独自の既存ポータルサイトと民間の支援サイトとが連携できる機能を構築。民間支援団体から挙がった事例を既存ポータルサイトに表示させられるようになり、これまで本市と連携を図っていなかった支援事業者との協力関係を構築することが可能に。
〇登壇者
山形県鶴岡市
山形県酒田市
パネルディスカッション3では山形県鶴岡市と山形県酒田市が登壇。これまで各自治体で行ってきた事業承継支援を、生活圏内である広域(鶴岡市・酒田市)で連携する形で実証事業に取り組むことになった両市。本実証事業実施前の課題や実証内容についてご説明をいただきました。
<事業承継に関する課題>
事業承継の機運醸成、承継が必要な事業者の把握ができておらず、支援ニーズの把握やマッチング創出の機会提供、的確な情報発信に課題があった。
<実証内容>
【①アンケートの実施】
各商工団体と連携し、5,140事業者に事業承継に関するアンケートを実施。自治体の進めるべき事業承継支援の施策立案のための良い基礎情報を得られた。
【②2代目以降の経営者候補のコミュニティ形成】
事業承継を行った地域内経営者をパネリストに、後継者自身の経験談を聴く『事業承継座談会』を開催。酒田市・鶴岡市共に2社ずつ登壇し、2代目以降の経営者に対して「事業承継経験のシェア」を図った。
【③マッチングイベントの開催】
事業を譲渡したい方、事業を譲受したい方をマッチングするイベントを、庄内と東京で開催。庄内は社名を出さないノンネーム、東京は1社のみオープンネームと、試行錯誤しながら実施。特に東京開催では、積極的にマッチングを検討する事業者が現れるなど、前向きな関心・反応が多かった。
セミナーの様子は こちらよりご覧ください。
令和5年度実証事業に参画した6自治体の取組内容の詳細は、こちらからぜひご覧ください!
東北経済産業局 産業部 中小企業課
〒980-8403 宮城県仙台市青葉区本町3-3-1
TEL: 022-221-4922
MAIL:bzl-tohoku-shokei@meti.go.jp