伝統的工芸品とは?
伝統的工芸品について
日本の「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」で定められた指定要件(伝統的技術、技法、原材料、製造地域等)を満たし、国に指定されたもののみが「伝統的工芸品」と称することができます。 日本では長年にわたり受け継がれてきた技術・技法を使ったものづくりが行われています。
この文化性を基調とした伝統的技術・技法、そして地域の資源・技術・風土を基盤に作られた工芸品のうち、伝産法が定める指定要件に合致するかを厳格に審査し認められたもののみが「伝統的工芸品」として指定されます。昭和49(1974)年に伝産法が施行後、これまで243品目が指定を受けています。
日本の伝統的工芸品は、現在、伝統的な商品として製造されるだけでなく、その技術・技法を生かした新商品の開発、国内外のデザイナーや著名ファッションブランドとのコラボレーションなど、幅広い商品展開が行われています。
伝産法の目的
伝産法の第1条にはその目的が次のように掲げられています。
「この法律は、一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品が、民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれてきたこと及び将来もそれが存在し続ける基盤があることにかんがみ、このような伝統的工芸品の産業の振興を図り、もって国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」
工芸品であること
「工芸品」という言葉は、茶碗や箸から、着物や家具、茶道具まで、幅広く使われています。工業製品や玩具を含めて広い範囲に考える人もいれば、芸術性の高いものだけを工芸品と考える人もいますが、伝産法では地域経済の発展に寄与する「産業」として地域で継続的に生産されてきた製品として「工芸品」を捕らえています。
主として日常生活の用に供されるものであること
伝統的工芸品は、一般の人々の日常生活に使用される工芸品であることを要件としています。例えば、冠婚葬祭や節句のように、一生にあるいは年に数回の行事に活用され、日本人の生活に密着したもの、また、人形や置物など、普通の家庭に日常的に生活に関わるものです。また、日常生活に使用されるものとは、必ずしも安価で入手が容易であることを意味するものでもありません。いわゆる美術工芸品は、美術的価値が評価されるものであり、産業として振興を図るものとは異なるので、「日常生活の用に供するもの」からは除かれます。
その製造過程の主要部分が手工業的であること
「製造過程の主要部分」とは、製品を製造する工程のうち、製品の品質、形態、デザイン等のいわゆる製品の持ち味に大きな影響を与える部分をいいます。伝統的工芸品の持ち味と、その手工業性は切り離せない関係にあります。機械化を進め、手工業が失われてしまうと、伝統的工芸品本来の持ち味が消えてしまう可能性があります。したがって、「手工業的」とは、持ち味に影響のない補助的な工程は別として、その主要工程を手作業で製造することをいいます。
伝統的技術又は技法により製造されるものであること
原則として当該工芸品を製造する技術または技法が100 年以上の歴史を有し、今日まで継続していることが必要です。この場合でも、その技術や技法が受け継がれてきた間に改善発展があったとしても、それが根本的な変化や、製品の特質を変えるまでにいたらなければ、伝統的技術又は技法に含まれます。
伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること
製造技術とともに原材料も伝統的工芸品の持ち味に大きな影響をあたえます。ここでいう「伝統的」も前段の「伝統的技術又は技法」と同様、原則として100 年以上の歴史を有し、今日まで継続していることが必要です。しかしながら、現実にはすでに枯渇したものや入手困難なものがあり、その際には持ち味を変えない範囲で同種材料へ転換することは可能です。たとえば、木材の樹種間の転換のように品質等に影響をあたえない範囲での同種の原材料への変化の場合は、継続性があると考えます。
一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること
一定地域において、一定数以上の従事者がその製造を行っており、地域産業として成立していることを意味しています。「一定の地域」とはその工芸品の製造される地域をさし、「少なくない者」とは、原則として、10企業以上または30人以上の従事者を意味します。
伝統工芸士について
伝統工芸士とは?
伝統工芸品は、その主要工程が手作りであり、高度の伝統的技術によるものであるため、その習得には長い年月が必要とされます。また、生活様式の変化に伴い、伝統的工芸品の需要が低迷していることなどにより後継者の確保育成が難しく、業界全体の大きな課題となっています。
この課題に対処するため、一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会(伝産協会)において、経済産業大臣指定伝統的工芸品及び工芸用具または工芸材料の製造に従事する技術者を対象に製造技術と知識について昭和50年度から「伝統工芸士認定試験」を実施し、合格者を「伝統工芸士」として認定しています。
なお、受験資格は、当該伝統的工芸品等の製造に現在も直接従事し、12年以上の実務経験年数を有している者としています。実務経験年数には、専門養成期間の修得期間が含まれます。
伝統工芸士の認定登録
認定登録を受けた伝統工芸士は、「伝統工芸士認定事業実施要領」により当該産地伝統工芸士会を結成し、同会に入会するとともに、伝統工芸士相互の交流及び活動を通じ、当該産地振興に努めなければければならないと定められています。
また、産地伝統工芸士会は、日本伝統工芸士会に加入することが義務付けられています。
令和6年2月時点で、全国で約3,500名の伝統工芸士が後継者の育成や教育現場での普及活動などで活躍しています。
日本伝統工芸士会
日本伝統工芸士会は、全国の伝統工芸士が一体となり、伝統的技術保持者としての自覚を高め、その社会的地位の向上に努めるとともに、親睦と情報交換を行うことにより、伝統的技術・技法の継承・向上を図り、我が国の伝統的工芸品産業の振興に寄与することを目的として昭和56年に設立されました。目的を達成するための事業として全国伝統工芸士大会及び日本伝統工芸士会作品展の開催などを行っています。