
宮城県
宮城伝統こけし
産 地

指定年月日
昭和56年6月22日
歴史
木工用のロクロを用いて椀や盆などの器を作る職業の工人は木地師と称されます。ロクロとその技法は5世紀の頃、大陸を経由して日本に伝来したと考えられています。
8世紀孝謙天皇の勅願により作られた100万基の三重の小塔は造型的に美しく、また技術的に優れていて、完成した770年、天平時代の木地師たちの技術の高さを知ることができます。百万塔は、現在、法隆寺に千基保存されています。
ロクロ挽きの技法は時代とともに、北海道を除いて日本の各地に伝播され、木地製品が生産されました。木地師は器を作ることが主ですが、一部の木地師は土地のニーズに応えて独楽(こま)などの木地玩具を作るようになりました。その玩具作りの技法は東北地方の木地師にも伝来し、江戸時代末期の文化・文政(1804~1830)の時代、こけしが創始されたと考えられます。残る文献から、こけしは宮城県の作並温泉に住む工人が最初と言えるでしょう。こけしは県内の鳴子、遠刈田、弥治郎(白石)に、そして県外の温泉場に伝わり、その土地風のこけしを生産しています。
それらは、現在11系統に分類されており、宮城県内では鳴子系、遠刈田系、弥治郎系、作並系、肘折系(鳴子系の形態と遠刈田の描彩様式が融合)の5系統のこけしが作られています。
特徴
こけしは、最も簡略化された造形の美しさに加え、清楚にして可憐な姿は山村の自然に囲まれた素朴な工人の心を通じて表現した美しさであり、産地の独特の形・模様を通じて今日に受け継がれています。
宮城県内には、「鳴子こけし」「作並こけし」「遠刈田こけし」「弥治郎こけし」「肘折こけし」の5つの伝統こけしがあり、系統作者により形・描彩に異なる特徴があります。
産地PR・最近の取り組み、課題など
東北の山間地に生まれた伝統こけしは、大きく11の系統に分けられます。
次の世代へと継承されるうちに、それぞれの地域で特徴的な形や顔、胴模様が表れるようになってきました。 どれをとっても美しく、愛らしく、鑑賞者によって好みが分かれるのも、こけし鑑賞の楽しさのひとつと言えましょう。 そのうちの五系統(遠刈田系、弥治郎系、作並系、肘折系、鳴子系)が「宮城伝統こけし」として、国の伝統的工芸品に指定されました。
宮城伝統こけし組合連合会は、鳴子木地玩具協同組合、仙台地区伝統こけし工人組合、弥治郎こけし業協同組合、遠刈田伝統こけし工人組合という四地区の協同組合によって、産地の振興に努めているところです。
課題は、後継者の育成です。育成指導を始め、体験教室などを通じてこけし作りに親しんでもらえるよう取り組んでいます。
~イベント~
こけしまつり
全国のこけしを一堂に集めたこけしまつりやこけしコンクールを、各産地で毎年盛大に開催しており、あたたかなぬくもりのある「こけし」や「木地玩具」と出会うことができます。
◆全日本こけしコンクール(白石市)5/3~5/5
◆全国こけし祭り(大崎市鳴子温泉)9月第1土曜日・日曜日
◆蔵王町遠刈田こけしまつり(蔵王町遠刈田温泉)10月下旬
製法や工程について
製造工程
- 原木の乾燥(木の皮をむいて6ケ月~1年間自然乾燥させる)
- 玉切り(寸法に合わせて原木を切る)
- 木取り(木の余分な部分を切り取る)
- 荒挽き、頭挽き、胴挽き(ろくろを回転させて頭の部分、胴の部分を鉋で削る)
- 磨き(サンドペーパー、とくさなどで磨く)
- さし込み、はめ込み(胴や頭をたたき込む)
- 描彩(顔や胴の絵柄を描く)
- 仕上げ(仕上げにロウをひく)
技術・技法
- 乾燥は、自然乾燥によること。
-
木地造りは、次のいずれかによること。
- 鳴子こけしにあっては、次の技術又は技法によること。
- 荒挽きは、横ろくろ及びろくろがんなを用いること。
- 木地仕上げは、横ろくろ及び仕上げかんなを用いて仕上げ削りをした後、みがき仕上げをすること。
- 頭部は、「瓜実型」とすること。
- 胴部は、上部に段のついた「内反胴」とすること。
- 遠刈田こけしにあっては、次の技術又は技法によること。
- 荒挽きは、縦ろくろ及びろくろがんなを用いること。
- 木地仕上げは、縦ろくろ及び仕上げかんなを用いて仕上げ削りをした後、みがき仕上げをすること。
- 頭部は、「瓜実型」又は「下張型」とすること。
- 胴部は、なで肩の直胴とすること。
- 弥治郎こけしにあっては、次の技術又は技法によること。
- 荒挽きは、縦ろくろ及びろくろがんなを用いること。
- 木地仕上げは、縦ろくろ及び仕上げかんなを用いて仕上げ削りをした後、みがき仕上げをすること。
- 頭部は、「瓜実型」、「福助型」、「下張型」、「丸型」又は「結髪型」とすること。
- 胴部は、なで肩の直胴若しくは中くびれ胴又は上部に段のついた直胴若しくは中くびれ胴とすること。
- 作並こけしにあっては、次の技術又は技法によること。
- 荒挽きは、縦ろくろ及びろくろがんなを用いること。
- 木地仕上げは、縦ろくろ及び仕上げかんなを用いて仕上げ削りをした後、みがき仕上げをすること。
- 頭部は、「福助型」、「瓜実型」又は「丸型」とすること。
- 胴部は、なで肩の裾締め直胴又は上部に段のついた裾締め直胴若しくは下くびれ胴とすること。
- 肘折こけしにあっては、次の技術又は技法によること。
- 荒挽きは、ろくろ及びろくろがんなを用いること。
- 木地仕上げは、ろくろ及び仕上げかんなを用いて仕上げ削りをした後、みがき仕上げをすること。
- 頭部は、「福助型」又は「下張型」とすること。
- 胴部は、なで肩の直胴若しくは裾広がり直胴又は上部に段のついた直胴若しくは裾広がり直胴とすること。
- 鳴子こけしにあっては、次の技術又は技法によること。
- 頭部と胴部の組み付けをする場合は、次の技術又は技法によること。
- 鳴子こけしにあっては、「はめ込み」によること。
- 遠刈田こけし、弥治郎こけし、作並こけし及び肘折こけしにあっては、「さし込み」又は「はめ込み」によること
- 描彩は、次のいずれかを手描きすること。
- 鳴子こけしにあっては、頭部に「水引き手及び髪」又は「髷」及び「面相描き」を、胴部に「菊」、「楓」、「牡丹」、「あやめ」、「撫子」又は「桔梗」及び「ろくろ模様」を描彩すること。
- 遠刈田こけしにあっては、頭部に「放射状の手絡、振れ手絡及び髪」又は「オカッパ」及び「面相描き」を、胴部に「菊」、「梅」、「衿」、「木目」、「いげた」、「あやめ」、「牡丹」、「桜」又は「ろくろ模様」を描彩すること。
- 弥治郎こけしにあっては、頭部に「ろくろ模様」、「髪模様」又は「髷模様」及び「面相描き」を、胴部に「ろくろ模様」、「菊」、「枝梅」、「桜」、「衿」、「牡丹」、「蝶」、「松葉」、「裾」、「あやめ」又は「結びひも」を描彩すること。
- 作並こけしにあっては、頭部に「水引き状の手絡及び向う結び髪」、「放射状の手絡及び髪」又は「オカッパ」及び「面相描き」を、胴部に「菊」及び「ろくろ模様」又は「牡丹」及び「ろくろ模様」のいずれかを描彩すること。
- 肘折こけしにあっては、頭部に「リボン状の手絡及び髪」、「放射状の手絡及び髪」又は「オカッパ」及び「面相描き」を、胴部に「菊」及び「ろくろ模様」を描彩すること。
- 仕上げは、ろうみがき仕上げをすること。
原材料
- 木地は、ミズキ若しくはイタヤカエデ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
- 描彩は、墨又は染料ですること。
- ろうは、モクロウ若しくはハクロウ又はこれらと同等の材質を有するものとすること。
~東北のこけし11系統~
- 津軽系(青森県:温湯温泉、大鰐温泉など)
- 南部系(岩手県:盛岡市、花巻市、宮古市など)
- 木地山系(秋田県:大館市、湯沢市など)
- 遠刈田系(宮城県:遠刈田温泉)
- 弥治郎系(宮城県:白石市、鎌先温泉、小原温泉など)
- 作並系(宮城県:仙台市、作並温泉)
- 鳴子系(宮城県:鳴子温泉)
- 肘折系(山形県:肘折温泉、宮城県:仙台市)
- 山形系(山形県:山形市、米沢市、天童市など)
- 蔵王高湯系(山形県:蔵王温泉)
- 土湯系(福島県:福島市、飯坂温泉、土湯温泉など)
産地組合の概要
- 組合名宮城伝統こけし組合連合会
鳴子木地玩具協同組合
仙台地区伝統こけし工人組合
弥治郎こけし業協同組合
遠刈田伝統こけし工人組合 - 所在地宮城県大崎市鳴子温泉字尿前74-2 日本こけし館内
- TEL宮城伝統こけし組合連合会(鳴子)0229-83-3600
- FAX0229-82-2589
- ホームページみやぎ蔵王こけし館:遠刈田
日本こけし館:鳴子温泉
弥治郎こけし村:白石
- 企業数38社
- 従事者数50名
- 年間生産額約2億円(うち伝産品 約1億円)
- 伝統工芸士13名(2022年4月現在)
- 主な製品宮城伝統こけし