
秋田県
樺細工
産 地

指定年月日
昭和51年2月26日
歴史
樺細工の産地旧角館町は、秋田県の中央、仙北平野の北部に位置し、清流玉川と桧木内川に挟まれた城下町としての藩政時代はもとより明治以降においても政治経済の中心地でした。
角館の樺細工は、天明年間(1771~1788年)俸禄だけではとても生きられなかった下級武士の手内職として始められました。天明の頃は、大凶作、飢鐘の時代でもあり、藩を挙げて殖産興業に励む経済力もなく、元手のかからない自生する近在の山桜の樹皮を剥いで細々とつくられていた時代でありました。
角館の樺細工は、こうした下級武士の困窮に育まれたと言っても過言ではありません。
その後、紆余曲折の時を経て現在従事者約62名、年間生産額3億円と、角館の地場産業となっています。
特徴
樺細工は、世界でも珍しい山桜の樹皮を木地の表面に張ったもの又は積層状に貼り重ねた樹皮を彫刻したもので、独特な技法により山桜の樹皮の特有な美しさを表現した製品です。
樹皮の種類には、あめ皮、ちらし皮、ひび皮など10種類以上あり、用途により使い分けられ、仕上げられた作品には、同一のものはありません。
実用的な堅牢さと渋い野趣ある味わいを持ち、強靱で防湿性に優れ、長年の使用とともに独特の光沢が増していきます。
産地PR・最近の取り組み、課題など
樺細工の材料となる樹皮は山桜と称するもので「ヤマザクラ、カスミザクラ、オオヤマザクラ」の樹皮を使用しています。
樺細工が、この地に誕生して250年以上経過した現在、秋田県内の山桜の樹皮は殆ど採取されたといってもいいです。
年間の使用量は10トン、金額にして約1.5千万円に達します。
現状は岩手県、青森県、福島県、宮城県産の樹皮が供給の大半となり、伝統的工芸品樺細工の存続に大きなウエイトを占めていますが、近年の天候不順により原材料の確保が困難を極めています。
これまで、国、秋田県の支援を受け、原材料確保「山桜植栽事業」に取り組み、良質の樹皮を期待しながら試行錯誤を続けています。
また、近年は国内のみならず海外への販路の取り組みも行っています。
角館は、桜の名所として全国的に知られ、毎年300万人程の観光客が訪れます。そんな折、樺細工に触れて親しんでもらいたいと願っています。
産地イベント
角館町樺細工伝統工芸展(毎年10月開催)
製法や工程について
製造工程
樺細工は大きく分けて3つの製品に分類できます。印籠や茶筒などに樹皮を巻いた型もの、何枚も重ね合わせて古くは帯止め、現在ではブローチやペンダントに加工するたたみもの、表張りした木地ものです。ヤマザクラの樹皮(樺)を薄く加工して鏝(コテ)で張りつけて、素材の特色を生かした作品が作り上げられます。

技術・技法
- 「段取り」は、樹皮を「はだけほうちょう」を用いて「ひび皮」、「ちらし」、「普通皮」、「ちりめん」、「金系」、「銀系」、「あめ皮」又は「二度皮」になるように、「樺はだけ」をすること。
- 細工は、次のいずれかによること。
- 「型もの」にあっては、次の技術又は技法によること。
- 「仕込み」は、「芯体造り」並びに「胴皮張り」、「胴内皮張り」及び「口樺張り」をすること。この場合において、接着は、「木型」及びこてを用いて「にかわ張り」をすること。
- 「胴皮」及び「口樺」の接合は、「ぶち目組み」によること。
- 「天場決め」をすること。
- 「胴切り」をするものにあっては、「摺り合わせ」をすること。
- 「小縁張り」をすること。
- 「天皮張り」、「天内皮張り」、「底皮張り」及び「底内皮張り」をすること。
- 「木地もの」にあっては、次の技術又は技法によること。
- 木地造りは、「内張り」をした後「仕上げ」をした部材を木くぎ又はにかわを用いて成形すること。
- 「外張り」をすること。この場合において、木地の角丸部分の「外張り」は、「ぶち目組み」とすること。
- 「たたみもの」にあっては、次の技術又は技法によること。
- 「樺たたみ」は、節が無く光沢の有る「樺」ににかわを塗付したものを熱した鉄板を用いて圧着すること。
- 成形には、胴付きのこ及び小刀を用いること。
- 「型もの」にあっては、次の技術又は技法によること。
- 「仕上げ」は、「荒ならしほうちょう」、トクサ及び「仕上げほうちょう」を用いてならした後、ムクの葉及び砥の粉を用いてみがくこと。

原材料
- 使用する樹皮は、ベニヤマザクラ又はヤマザクラのものとすること。
- 木地は、ホオノキ、スギ、ヒノキ、ヒバ若しくはキリ又はこれらと同等の材質を有するものとすること。
産地組合の概要
- 組合名角館工芸協同組合
- 所在地〒014-0352 秋田県仙北市角館町外ノ山18
- TEL0187-53-2228
- FAX0187-53-2293
- ホームページhttps://www.kabazaiku.com/
- 企業数39社
- 従事者数62名
- 年間生産額約3億円
- 伝統工芸士9名
- 主な製品茶器(茶筒、トレー)