東北の伝統的工芸品

福島県
会津本郷焼

産 地

指定年月日

平成5年7月2日

歴史

戦国時代に蒲生氏郷公が会津若松の黒川城(若松城)の屋根瓦を焼かせたのが始まりとされ、その後、会津松平藩祖 保科正之公の御用窯として繁栄しました。
東北最古の会津本郷焼は陶器の祖、水野源左衛(1647年)と磁器の祖、佐藤伊兵衛(1800年)が、陶祖廟に祀られており、その流れが現在に受けつがれ伝統の姿を現代に活かされております。

特徴

本産地は陶器、磁器の両方を製造し、磁器は呉須による染付や和洋絵の具による彩画等多数あります。
陶器は伝統的なあめ釉や自然灰釉を使用し素朴で親しみやすい深い味わいを持っています。

産地PR・最近の取り組み、課題など

昭和の街並みが残るメインストリート・瀬戸町通りから分かれる細い道々に窯元が点在しています。
作風も様々な個性的な陶器・磁器を楽しめます。

産地イベント

◇会津本郷せと市 8月第1日曜日
◇陶祖祭 9月16日頃

製法や工程について

製造工程

伊兵衛とは
会津本郷焼の明治時代の大隆盛期の基盤を構築したのは、本郷が生んだ名工「佐藤伊兵衛」その人である。 伊兵衛は、全国の陶業地が渇望していた白磁創生という偉業を成し遂げ、進んで多くの後継者を育て上げ、欧米に輸出するまでの大陶業地を現出したのである。しかも、会津本郷焼の土瓶・急須は大好評を博し、国内の需要に応じきれなかったといわれている。


有田への出発
代々子孫は瓦師として会津藩に仕えていたが、伊兵衛は仏門に入った。だが、当時藩が企画していた白磁開発に奮起して「何ぞ一つの物産を起こして国益を図らん」の言辞を残し、仏門を去った。 伊兵衛一家は焼き損じや借財により不幸が続いたが、本場の有田で製法・器械を見聞するために、彼は会津の町を涙ながらに出発した。 遠く両国の諸領地の瀬戸場を視察すべく足かけ2年にわたる長旅を敢行したのは、彼が如何に会津白磁の創生に心を燃やしていたかが理解できるが、彼に絶大な信頼を寄せ支援した会津藩家老由中玄宰の采配も忘れてはならない。

産業スパイ
有田の白磁製法は秘密が守られており他国者がみだりに焼き場に入ることが許されないことは勿論、そこの工人たちにも秘密を守るための罰則規定が設けられていた。 しかし、伊兵街の心境に感動した多くの人々の助けと、特に佐賀鍋島藩主の菩提寺高伝寺の老僧の計らいにより、寺の奴僕となって焼き場に入りこんだと言われている。そこで、彼は原料の相違を初めて知り得たようだ。 このようにして、産業スパイの成果を確かめ帰国の途についた。途中白磁製造に必要な染付顔料等を長崎から購入するなどして、多くの益があったことは言うまでもない。

白磁完成
寛政11年(1799年)には、新製役場(白磁製造役場)を建築し、弟子も肥前皿山風の窯(有田風磁器焼成用登り窯)を築き、会津から発見した白い土石を数種調合し、会津白磁を完成させたのであった。 会津藩では、伊兵衛を瀬戸方棟梁に任命し、町奉行西川源蔵の支配下とした。その西川氏の不正を上訴したことにより、伊兵衛は刑を受け、一時陶業が停滞してしまったが、彼の熱意を認めた藩は再び棟梁として復帰させた。 これからが彼の真に活躍した時代であり、81歳で亡くなるまで多くの後継者の育成に力を注ぎ、幕末の盛況期、明治初期から中期の大盛況期に名を連ねた名工は皆、伊兵街の門弟である。

終わりに
戊辰の戦役で完膚なきまで破壊された窯業界を、短い期間で長足の進歩を遂げて大隆盛期を現出したのも、伊兵衛から受け継がれた互助の精神が、それを実現させたのだろう。 伊兵衛が会津本郷焼業界に残した功績は、技術・技法は勿論、陶工魂の中にも息づいていると考える。伊兵衛の白磁創生から二百周年の今日、残された文献によってそれを解明し、彼を顕彰した小冊子を発刊する予定である。

技術・技法

  1. 成形は、次の技術又は技法によること。
    1. ろくろ成形、手ひねり成形又はたたら成形によること。
    2. 磁器にあっては、1.に掲げる成形方法によるほか、素地が1.に掲げる成形方法による場合と同等の性状を有するよう、素地の表面全体の削り成形仕上げ及び水拭き仕上げをする袋流し成形又は「二重流し成形」によること。
  2. 素地の模様付けをする場合には、印花、櫛目、はけ目、イッチン盛り、面とり、はり付け、布目、化粧掛け又は彫りによること。
  3. 下絵付けをする場合には、線描き、つけたて、浸しつけ又はだみによること。この場合において、絵具は、「呉須絵具」、「鉄錆絵具」又は「銅絵具」とすること。
  4. 釉掛けは、浸し掛け、流し掛け又は塗り掛けによること。 この場合において釉薬は、磁器にあっては、「木灰釉」、「石灰釉」、「青磁釉」、「海鼠釉」、「鉄釉」、「銅釉」、「黄磁釉」又は「金結晶釉」、陶器にあっては、「土灰釉」、「あめ釉」、「白流し釉」、「青流し釉」、「鉄釉」、「銅釉」、「黄磁釉」、「貫入釉」又は「乳白釉」とすること。
  5. 上絵付けをする場合には、線描き、つけたて又はだみによること。

原材料

  1. 使用する陶土は、磁器にあっては、「大久保土」、「砂利土」、「胃土」又はこれらと同等の材質を有するもの、陶器にあっては、「的場粘土」、「大久保土」又はこれらと同等の材質を有するものとすること。

産地組合の概要

  • 組合名会津本郷焼事業協同組合
  • 所在地〒969-6041 福島県大沼郡会津美里町字川原町1823-1
  • TEL0242-56-3007
  • FAX0242-93-6035
  • ホームページhttps://aizuhongouyaki.jp/
  • 企業数13社
  • 従事者数257名
  • 年間生産額約27億円(うち伝産品 約1億6000万円)
  • 伝統工芸士8名
  • 主な製品茶器、酒器、湯呑み、花器 など