
秋田県
川連漆器
産 地

指定年月日
昭和51年12月15日
歴史

国の伝統的工芸品、川連漆器の産地である湯沢市は、秋田仏壇の産地でもあり、稲庭うどんの里でもあります。
秋になり収穫の時期を迎える頃、この地を治めた小野寺氏の居城した高台から見ると、一面の黄金色の稲穂、これはまるで稲の庭…稲庭の名前の由来です。その地に立つと皆うなずく絶景でした。
今からさかのぼること約830年、農業主体の川連村は1年の半分は雪に覆われ、何か副収入を得なければ生活できないほど困窮していました。
その折、源頼朝の家臣である小野寺重道公が、平氏討伐に出陣し、大きな手柄をたて、この地を支配します。道重公は稲庭に居城し、その弟である道矩公は古四王野尻(現在の川連漆器の中心地)に館を築き、農民に内職として武具に漆を塗ることを教えました。これが川連漆器の始まりとされています(1193年)。漆は藩の計らいで容易に調達でき、また、当時の職人が自ら漆掻きをするという自給が可能でした。何よりも自然に恵まれており、奥羽山脈から当産地まで流れる雄大な皆瀬川を利用し、栗駒山系のブナの原木が木流しにより調達されました。
本格的に漆器産業が始まったのは17世紀中頃の江戸時代後期。日用食器としての椀づくりが始まり、商人も現れ椀師工程絵図も描かれています。
途中、天保の飢鐘や戦後の大不況などにより、当産地は消滅の危機に直面しましたが、地道に着実に発展を遂げていきました。
明治時代には新しい技術開発が行われ、堅牢さを誇る実用的な生活用品として日常生活に密着し、今日川連漆器として親しまれています。
特徴
川連漆器は丈夫で使い易く比較的廉価なため、普段使いに喜ばれている実用漆器です。
【堅牢さ】堅牢な下地、中でも「地炭付け」「柿研ぎ」及び生漆を塗る「地塗り」は、代表的な下地工法です。川連漆器の堅牢さは、何度も繰り返し行われる「地塗り」「中塗り」によるものです。
【花塗り】漆の流れを予測しながら、潤沢な上塗りの漆を塗ったままで仕上げる「花塗り」。研いだり磨いたりせずに、自然のままの線と光沢を尊重する塗り立ての技法によって、豊かな曲線と漆の持つ優しくふっくらした質感が生まれます。
【沈金技法】蒔絵よりも歴史は新しく、明治からと言われています。川連漆器の沈金刀(カンナ)は刃先を丸く曲げた独特の形状です。カンナの刃先を手前に「引っ掻く」ように引いて彫る技法で、これにより浅彫りが可能となり、繊細で立体感のある沈金ができるようになりました。
川連漆器の主流は椀であり、6割以上を占めていますが、今では幅広いアイテムを開発しています。伝統を守りながらも時代に即応したものづくりにチャレンジし、また、関東を中心として全国各地に販路を拡大しています。
産地PR・最近の取り組み、課題など
湯沢市川連漆器伝統工芸館において、毎月15日の「椀この日」イベントや年間を通じて様々な企画展を行っています。また、秋田県漆器工業協同組合のホームページやfacebook、InstagramなどのSNSやECサイトを活用して、川連漆器の魅力を発信しているので、ぜひご覧になってください。
職人の高齢化や後継者不足が大きな課題です。産地の職人が講師を務め、木工・塗り・加飾の各部門の勉強会を実施しています。また、加飾体験教室などを通じて、漆器に親しんでもらえるよう取り組んでいます。
~地場産業拠点施設~
《湯沢市川連漆器伝統工芸館》
〒012-0105 湯沢市川連町字大舘中野142番地1
TEL:0183-42-2410
産地イベント
毎年10月 川連塗りフェア
製法や工程について
製造工程
- 木取り
用材の節、損傷部分などを避け、原木をおおまかな寸法に切り取る。
(原木:椀は主にブナや栃、箱物は主に朴を用いる。) - 荒挽き
合型を取り付けたろくろで、内外両面をおおまかに挽く。
- 燻煙乾燥
荒挽きの際に出た木くず等の廃材を利用した循環方式により1~2ヶ月間、燻煙しながら乾燥する。
- 仕上挽き
ろくろの台座に取付けた合型に添ってカンナを移動し挽き上げる。
- 下地
従来の直接木地に生漆を塗る「地塗り」の他、燻椀製造の際の「蒔地」「漆本堅地」、伝産法指定の「渋下地」「蒔地」「漆本下地」などの方法がある。
- 中塗り
繰り返し漆を塗っては研ぐ。
- 上塗り
平滑に漆を塗る高度な技術を要する。
- 加飾
加飾は蒔絵、沈金で絵付けをする。
木取り工程 燻煙工程 仕上挽き工程 上塗り工程 蒔絵工程 沈金工程 技術・技法
- 木地造りは、次のいずれかによること。
- 挽き物にあっては、ろくろ台及びろくろがんなを用いて成形すること。この場合において、「煮沸」及び「薫煙乾燥」をすること。
- 「角物」にあっては、「挽き曲げ」、「留付け」又は「ほぞ組み」をすること。
- 曲げ物にあっては、「ころ」を用いる「曲げ加工」をすること。
- 下地付けは、次のいずれかによること。
- 「蒔地下地」にあっては、生漆及び炭粉を用いる「掛地」をした後、生漆を用いる「地塗り」をすること。
- 「渋下地」にあっては、「地炭付け」、「柿研ぎ」及び生漆を用いる「地塗り」をすること。
- 「漆本下地」にあっては、「のり漆」を用いる「布着せ」、「さび」を用いる「布目摺り」、「地の粉付け」、「切粉付け」、「さび付け」及び生漆を用いる「地塗り」をすること。
- 塗りは、次のいずれかによること。
- 「花塗り」にあっては、精製漆を用いる下塗り、中塗り及び上塗りをすること。この場合において、塗りには漆刷毛を用いること。
- 「ろいろ塗り」にあっては、「素黒目漆」を用いる下塗り及び中塗りをし、「ろいろ漆」を用いる上塗りをした後、ろいろ仕上げをすること。
- 加飾をする場合には、「沈金がんな」を用いる沈金又は蒔絵によること。
原材料
- 漆は天然漆とすること。
- 木地は、ホオノキ、トチ、ケヤキ若しくはブナ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
- 燻煙乾燥
産地組合の概要
- 組合名秋田県漆器工業協同組合
- 所在地012-0105 秋田県湯沢市川連町字大館中野142-1
- TEL0183-42-2410
- FAX0183-42-2633
- ホームページhttp://www.kawatsura.or.jp/
- 企業数115企業(個人含む) 組合員数80人
- 従事者数262名
- 年間生産額約5億円
- 伝統工芸士30名
- 主な製品椀、皿、鉢、盆、重箱、座卓、箪笥等